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平成23年税制改正による租税特別措置法改正(その1)

今回は平成23年税制改正による租税特別措置法についてですが、平成23年税制改正についてはどうなっているのかわかりにくいので最初に平成23年税制改正の経緯を整理しておきます。

そもそも平成23年税制改正は、法人税率の引き下げ等を含んだ「所得税法等の一部を改正する法律案」が1月25日に国会に提出されましたが、国会審議が整わず、2011年3月31日に期限の到来する租税特別措置等について、その期限を暫定的に同年6月30日まで延長する措置を講ずることを内容とする「国民生活等の混乱を回避するための租税特別措置法等の一部を改正する法律案」が議員立法により3月22日に提出され,3月31日に可決・成立し,同日付けで公布されました。

その後、「所得税法等の一部を改正する法律案」のうち、期限の到来する租税特別措置をはじめとする現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制を整備するための措置については、この法律案から削除するとともに、「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」として提出され、6月22日に可決・成立し,6月30日に公布されています。

そこで、租税特別措置法で関連がありそうな項目について確認します。

(1)税率関係

1.中小企業者等の法人税率(租税特別措置法42条の3の2第1項、2項)

制度の適用期限が平成24年3月31日まで延長されました。したがって、「中小企業者等」については、所得金額のうち年800万円以下の金額に対する法人税率が18%(本則:22%)とされています。

(2)税額控除関係

1.試験研究を行った場合の法人税額の特別控除の特例(租税特別措置法42条の4の2、68条の9の2)

2.事業基盤強化設備等を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除(中小企業等基盤強化税制)(租税特別措置法42条の7、68条の12

上記①、②については、単純に適用期間が平成24年3月31日まで延長されました

3.雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除(雇用促進税制)-新設

<制度の概要>

青色申告書を提出する法人離職者についての要件を満たすものが、平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する各事業年度において、雇用者数の増加等についての要件を満たす場合で、かつ、その法人が雇用保険法の適用事業を行っているときに、その事業年度の所得に対する法人税額から,20万円にその法人の増加雇用者数を乗じて計算した金額を控除することができるというものです(租税特別措置法42条の12第1項)。

<適用対象法人>

適用対象となる法人は、この制度の適用を受けようとする青色申告書を提出する法人のうち離職者についての要件を満たすことにつきその法人の事業所の所在地を管轄する都道府県労働局又は公共職業安定所の長がその法人に対して交付する雇用促進計画の達成状況を確認した旨を記載した書類(離職者についての要件を満たすことにつき確認した旨を記載したものに限る。)の写しを確定申告書等に添付することにより証明がされた法人とされています。

上記の「離職者」とは、基本的に会社都合による解雇により離職した労働者(雇用者であったもの)を意味します。厳密には、租税特別措置法施行規則第20条の7第2項で「法人の都合による雇用対策法施行規則附則第8条第2項第4号に規定する労働者の解雇」とされています。

雇用者」とは、法人の使用人(その法人の役員と特殊の関係のある者及びその法人の使用人としての職務を有する役員を除く。)のうち一般被保険者に該当するものを意味します(租税特別措置法42条の12第2項2号)。

雇用者の範囲から除かれる「その法人の役員と特殊の関係のある者及びその法人の使用人としての職務を有する役員」は租税特別施行令27条の12第5項で以下のように定められています。

① 役員(法人税法42条の12第2項第2号に規定する役員をいう)の親族

② 役員と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者

③ ①および②に掲げる者以外の者で役員から生計の支援を受けているもの

④ ②及び③に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族

「離職者についての要件」については、適用年度及びその適用年度開始の日前1年以内に開始した事業年度において離職者がいないことを意味します(租税特別措置法42条の12第1項1号)。

<適用事業年度>

制度の概要に記載のとおり、適用年度は平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する事業年度とされていますが、設立事業年度等は除くとされています(租税特別措置法42条の12第1項)。
設立事業年度については、基本的に設立事業年度は適用外だと考えておけばよいと思いますが、租税特別措置法42条の12第2項1号で定義されていますので詳細はそちらを確認してください。

また、この制度の適用を受けるためにはその事業年度において以下の要件を満たしていることが必要となります(租税特別措置法42条の12第1項)

①その法人の基準雇用者数が5人以上(その法人が中小企業者等である場合には2人以上)であること

「基準雇用者数」は、基本的にその事業年度に増加した雇用者数と考えればよいと思います(租税特別措置法42条の12第2項3号)。会社都合で解雇した労働者がいる場合にはそもそも対象となりませんが、自己都合で退職者がでて、その分雇用してもこの適用は受けられないということになります。

②その法人の基準雇用割合が10%以上であること

基準雇用割合とは、基準雇用者数の適用年度開始の日の前日を含む事業年度終了の日における雇用者の数に対する割合をいうとされています(租税特別措置法42条の12第2項4号)。簡単に考えれば前事業年度末の雇用者数の10%以上増加している必要があるということになると考えられます。
仮に前事業年度の雇用者数が100名だとすると、10名以上増加ということなので、そう考えるとなかなか適用は厳しいような感じがします。

③その法人の給与等支給額がその法人の比較給与等支給額以上であること

「比較給与等支給額」については、租税特別措置法42条の12第2項7号に定められていますが、要約すると以下のようになります。

比較給与等支給額=前事業年度の給与等の支給額+前事業年度の給与等の支給額×基準雇用割合×30%

④その法人が適用事業を行っていること

風俗営業など一定の事業は除外されますが、普通の適用事業者であれば気にしなくてよいものと考えられます。

<税額控除限度額>

税額控除限度額は、20万円にその法人の基準雇用者数を乗じて計算した金額とされています(租税特別措置法42条の12第1項)。
ただし、その適用事業年度の法人税額の10%(中小企業者等である場合は20%)が上限となっています。

<申告要件等>

この制度は、確定申告書に控除を受ける金額の申告の記載があり、かつ、その金額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り適用可能となっています。また、離職者についての要件を満たすことにつきその法人の事業所の所在地を管轄する都道府県労働局又は公共職業安定所の長がその法人に対して交付する雇用促進計画の達成状況を確認した旨を記載した書類(離職者についての要件を満たすことにつき確認した旨を記載したものに限ります。)の写しを確定申告書等に添付する必要があります。

4.エネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(エネルギー需給構造改革推進投資促進税制)

これは適用期間が平成24年3月31日まで延長されたことに加えて、以下⑤の「エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除」が創設されたことにより税額控除限度額の調整が行われることになりましたが、詳細は割愛します。

5.エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除-新規創設(租税特別措置法42条の5の2第1項から4項)

平成26年3月31日までの間に、エネルギー環境負荷低減推進設備等の取得又は製作若しくは建設をし、その取得等の日から1年以内にその法人の事業の用に供した場合で、一定の要件を満たす場合には、エネルギー環境負荷低減推進設備等の取得価額の30%の特別償却(中小企業者等の場合は、30%の特別償却と7%の税額控除を選択適用可)ができるというものですが、詳細は割愛します。

長くなりましたので、中小企業等の貸倒引当金の特例や特別償却関係などは次回以降とします。

日々成長

 

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