東日本大震災からの復興及びB型肝炎対策の財源確保のために行う税制改正の大綱-基本的に増税です
政府税制調査会が、東日本大震災からの復興及びB型肝炎対策の財源確保のために行う税制改正の大綱をとりまとめました。
気になる主なポイントは以下のとおりです。
①所得税
“復興特別所得税(仮称)”を導入し、平成25年から平成34年の間に基準所得税額の4%を課税する。ちなみに、基準所得額は、居住者(要は普通の人)の場合、「すべての所得に対する所得税の額」とされています。
②個人住民税
平成26年度から平成30年度まで均等割の税額を500円引き上げ年間4500円とする。
③法人税
“復興特別法人税(仮称)”を導入し、平成24年4月1日から平成27年3月31日に開始する事業年度に基準法人税額の10%を課税する。
④たばこ税
“復興特別たばこ税(仮称)”として、平成24年10月1日から5年間は地方税と合わせ1本あたり2円(1000本あたり2000円)、さらにその後5年間は1本あたり1円(1000本あたり1000円)を課税する。
財務省のHPによれば、平成22年度予算の所得税の税収は12.6兆円ということなので、単純計算すると約5000億円の税収が見込まれます。同様に法人税の税収は6兆円が見込まれているので10%で6000億円となり、所得税と合計で1兆1000億円の税収が確保できる計算となります。
年収400万円の単身サラリーマンの場合に与える影響を考えてみます。社会保険料率(厚生年金+健康保険)を12%として、概算で計算するものとします。
<課税所得>
400万円―134万円(給与所得控除:400万円×20%+54万円)―48万円(社会保険料控除:400万円×12%)―38万円(基礎控除)=180万円
><所得税額>
180万円×5%=9万円
<復興特別所得税額>
9万円×4%=3600円
同様に年収600万円で計算すると、税額が約22万円で、復興特別所得税の影響額が8800円程度となります。
また、大綱とは別に“復興産業集積区域(仮称)における新規立地促進税制(新規立地新設企業を5年間無税とする措置)”というものも導入が予定されています。
当初5年間、法人税等を0にするということかと思いましが、内容をみると圧縮記帳のようなもので課税の繰延にすぎない制度のようです。
内閣府のHP(税制調査会)に掲載されている資料から制度の内容を抜粋すると以下のようになっています。
(1)復興産業集積区域(仮称)内において、平成28年3月31日までの間に指定を受けた法人が、指定の日から同日以後5年が経過する日までの期間内の日を含む各事業年度において、所得金額を限度として再投資等準備金として積み立てたときは、その積立額を損金の額に算入できる制度を創設する。
(2)復興産業集積区域(仮称)内で機械又は建物等に再投資等を行った事業年度において、準備金残高を限度に特別償却できる(準備金の範囲で即時償却)制度を創設する。
そして、同資料の欄外に、小さく以下のように注書きが付されています。
「この準備金は、機械又は建物等に再投資等を行った事業年度において再投資等のための支出額と同額を、指定の日以後 10 年が経過した日を含む事業年度(基準年度)以後の各事業年度においては基準年度の準備金残高の10 分の1を、それぞれ取り崩して益金に算入する。」
財政的に苦しいのはわかりますが、単なる課税の繰延をあたかも当初5年間免税に見せかけようとしている意図が感じられます。
また、稼働後初年度から所得を出すのも簡単ではないので、これなら当初10年間に生じた繰越欠損金は15年間繰り越せるとしたほうが、進出する企業は多いのではないかと思います。
後に、法人税の税額に課税がされると、税効果の計算はどうするのだろうというのが気になりますが、そのうち実務対応報告がでるのではないかと思いますので、それを待ちたいと思います。
平成23年第11回 税制調査会(10月11日)資料一覧
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2011/23zen11kai.html
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