在外子会社からの外貨建借入金から生じた為替差損益は連結上消去する?
今回は一昨日の“在外子会社に対する外貨建貸付金から生じた為替差損益は消去する?”の補足です。
上記のエントリでは在外子会社に対する「外貨建貸付金」でしたが、在外子会社からの「外貨建借入金」の期末換算により生じた為替差損益の場合はどうなるかです。
結論からすると、この場合、親会社は在外子会社に対する投資(資産)と外貨建の負債を保有することになるので在外子会社等に対する投資持分に係るヘッジ取引としてヘッジ会計の適用対象とすることができます(外貨建取引実務指針72項)
ヘッジ会計を適用した場合、親会社でヘッジ指定以降に生じた為替差損益は在外子会社の換算により生じた為替換算調整勘定(親会社持分相当)と相殺することになります。
ただし、必ず相殺しなければならないというのではなく、ヘッジ会計の要件を満たす場合に限り相殺することができるに過ぎません。逆に言えば、相殺しようとするためには積極的にヘッジの要件を満たすようにする必要があります。なお、ヘッジ手段とヘッジ対象が同一通貨建であれば有効性の評価は省略可能です。
なお、相殺の対象となるのは、在外子会社の換算から生じた為替換算調整勘定の親会社持ち分相当額が上限で、それを超えるヘッジ手段から生じた換算差額は当期の損益に計上されることになります。
一般的にはあまりないと思いますが、簡単な例で考えてみます。なお、在外子会社からの借入金について親会社はヘッジ会計を適用するものとします。
より厳密に考えるとヘッジされるのはヘッジ指定後の変動のみのはずで為替換算調整勘定を0になるまで調整してよいのかという点が気になりますが、外貨建取引実務指針72項で以下のように規定されていることから為替換算調整勘定が0になるまで調整することになると考えられます。
外貨建取引実務指針72項
在外子会社に対する持分への投資に関する為替変動リスクに対するヘッジとして指定され、かつ、そのとおり実効のある外貨建取引を実行した場合、ヘッジ指定日以後発生した為替差損益については為替換算調整勘定として処理することになる。在外子会社に対する持分への投資に対する為替変動リスクのヘッジとしては、例えば、親会社が米ドル建ての借入れを実行し、当該米ドル建借入金を米国子会社への持分への投資に係るヘッジとして指定することにより行うことができる。この場合、借入金に係る換算差額が米国子会社の貸借対照表の換算から生じる親会社持分に係る為替換算調整勘定以下である場合には、連結財務諸表上、借入金の換算差額は全額、為替換算調整勘定に計上し、米国子会社の親会社持分から発生する為替換算調整勘定と相殺する。
なお、個別財務諸表上の処理としては、金融商品会計実務指針336項(3)において「・・・。一方、個別財務諸表においては、外貨建の子会社株式及び関連会社株式は取得時の為替相場で円換算され、換算差損益が当期の純損益に計上されないため、これに対するヘッジ手段に係る損益又は評価差額についてヘッジ会計を認める必要がある」とされていることから、ヘッジとして有効な部分は繰延ヘッジ損益として処理する必要があると考えられます。
だとすると、上記の例のように在外子会社の為替換算調整勘定残高との関係で個別財務諸表上の会計処理も影響をうけることとなり、決算手続き上は非常に煩雑となると考えられます。
正しくはないと思いますが、単体上は為替差損益として処理し、連結では為替換算調整勘定の範囲内で処理するというのが現実的な対応のような気がします。
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