就業規則で副業は禁止できる?-禁止されている副業が発覚したら・・・
洋服が好きでアパレル業で働いているものの、その給料だけでは生活が苦しいので夜のお仕事をしている女性がいるという話を聞いたことがあります。このようなケースに限らず、一時的に何らかの理由で資金が必要になったが給料では捻出できないというような場合には、通常の仕事に加えてバイトを掛け持つということもあり得ます。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「副業者の就労に関する調査」(平成21年7月6日公表)によれば、副業している人の割合は全体の8.1%でした。なお、副業している人を性別で区分すると、男性が45.6%に対して女性は54.4%でした。
統計局のHPで開示されている男女就業者数(2008年)によると、男性3,729万人に対して女性が2,656万人となっており、女性の就業者数は男性の約7割となっています。にもかかわらず、副業している人に占める女性の割合は女性のほうが男性よりも約10ポイント高くなっているので、見かけ以上に女性が副業しているケースが多いものと考えられます。
ところで、多くの会社では就業規則において副業が禁止されていることと思います。
現に、少し古い調査ですが、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「雇用者の副業に関する調査研究」によれば、副業を禁止している会社が全体の50.4%、許可必要が20.6%となっています。
規模別の回答結果は以下のとおりです。
(出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「雇用者の副業に関する調査研究」)
詳細を確認したい方は、以下のURL(独立行政法人労働政策研究・研修機構のHP)をご覧ください。
http://www.jil.go.jp/institute/reports/2005/documents/041_summary.pdf
副業が禁止されている場合は当然として、仮に許可制となっていたとしても「この給料では生活していけないので、夜のお仕事をさせて下さい」とは言えないのが普通ではないかと思います。したがって、労働者の立場からすれば、禁止されているあるいは許可が必要だと知りつつも会社に隠れて副業を行うということになります。
問題は、本来禁止あるいは許可制となっている副業を隠れて行っていたことが発覚した場合どうなるかです。つまり、会社は副業を行っていたことを理由として従業員に懲戒処分(極端な例でいえば解雇)を下すことができるかです。
普通に考えれば、会社と労働者は労働契約関係にあって、就業規則はその労働契約の基本的な取り決めとしての位置づけにあると考えられるので、その就業規則に違反したのであれば会社は懲戒処分を下すことができると考えられます。
この点に関する判例としては、小川建設事件(東京地方裁判所決定昭和57年11月19日 労働判例397号)があります。
この判例では「労働者は労働契約を通じて一日のうち一定の限られた時間のみ、労務に服することを原則とし、就業時間外は本来労働者の自由な時間であることからして、就業規則で兼業を全面的に禁止することは、特別の場合を除き、合理性を欠く」としつつも、「労働者がその自由なる時間を精神的肉体的疲労回復のため適度な休養に用いることは次の労働日における誠実な労務提供のための基礎的条件をなすものであるから、使用者としても労働者の自由な時間の利用に関心をもたざるをえず、また、兼業の内容によっては企業の経営秩序を害し、または企業の対外的信用、体面が傷つけられる場合もありうるので、従業員の兼業の許否について、労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮したうえでの会社の承諾にかからしめる旨の規定を就業規則に定めることは不当とはいいがたい」としています。
つまり、全面禁止は原則として合理性が認められないが、一定の規制を課すのは理解できるということです。
しかしながら、現実的には約半数の会社が全面的に副業を禁止しています。この場合、そもそもそのような規定が合理性がないと考えらえるので、従業員が違反しても会社は懲戒処分を課すことができないということになってしまうのでしょうか?
この点については、兼業の内容からして会社の経営秩序を害し、または企業の対外的信用、体面が傷つけられるような場合は、一般的に就業規則に定められていると思われる懲戒事由に該当するはずですので、懲戒処分も可能と考えられます。逆に言えば、副業の内容・程度に比して過重と思われる処分を課した場合は、合理性が認められないとされる可能性が高いと考えらます。
個人的には、業務に支障がなく副業の内容にも問題がなければ副業を認めてもよいのではないかと思います。ただし、業務に支障がないかどうかを判断するにも、その従業員が副業を行っているのかどうかが分からなければ正しく判断できないと思いますので、許可制にしておくのがよいと思います。
日々成長