会社区分が①から②に落ちたら・・・-繰延税金資産の回収可能性
従来、監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」における会社区分が①であった会社の利益水準が落ち込むと、当然のことですが会社区分が②になってしまうこともあります。
①の会社は「期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期(当期及びおおむね過去3年以上)計上している会社等」とされていますので、一度②に落ちてしまうと、仮に翌年度末に将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を計上していたとしても①の会社にすぐに戻れるわけではありません。
利益あるいは課税所得が下落した要因が、特殊なものであった場合でも、期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を3年継続しないと①の会社には戻れないのかが気になりますが、委員会報告に「毎期(当期及びおおむね過去3年以上)」と書いてある以上、その期間は②の会社ということになると考えれます。
会社区分が①から②になって大きく変わるのは、スケジューリング不能な一時差異に対する繰延税金資産を②の会社では計上できなくなる点です。
例えば、非上場株式の評価損に対して繰延税金資産を計上していた場合、②の会社になると多くの場合スケジューリング不能として繰延税金資産を計上できなくなります。
感覚的には、①の会社だからといって、スケジューリング不能な一時差異の金額が小さいわけではなく、むしろ長期にわたって塩漬けになっている有価証券やゴルフ会員権の評価損などがあるケースの方が多いように思います。
会社区分が③から④に落ちた時もインパクトは大きいですが、④は業績も相当悪化しているので会計に詳しくない方にも繰延税金資産の取り崩さなければならないというのを理解してもらいやすいですが、①から②の場合は、利益の水準が従来よりも下がっているものの、それなりに利益を計上しているので繰延税金資産を取り崩さなければならないというのを納得してもらいにくいように感じます。
最後に、有価証券評価差額(損)対して繰延税金資産を計上する場合は、監査委員会報告70号によって②の会社であっても回収可能性があるものとして繰延税金資産を計上してよいこととされています。