会社更生法はどんなもの?(その1)
昨日エルピーダメモリが会社更生法の適用を申請しました。
業務上、さすがに会社更生手続きのやり方を聞かれることはありませんが、会計上も会社更生法の適用を申請した会社に債権を有している場合には、貸倒引当金を計上する必要が生じます。
回収不能と見込まれる金額について貸倒引当金を計上すればよいのですが、回収不能を判断するにも会社更生手続というものの理解が不十分だと、判断に困ります。民事再生法ともどのように違うのかについても恥ずかしながら理解が曖昧です。
そこで会社更生法の手続きとはどんなものかを調べてみました。
1.会社更生法の概要
会社更生とは、窮地にある株式会社について、債権者、株主その他の関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とした再建型の法的倒産手続きのことです。
民事再生は、いわゆるDIP(Debtor in Possession)型で、原則として従来の経営陣が経営権及び財産の管理・処分を維持したまま手続きが進行するのに対して、会社更生は、いわゆる管理型で、原則として従来の経営陣の経営権および財産の管理・処分権は失われ、管財人にこれらの権限が専属します。また、会社更生では、担保付債権も租税債権等の優先権のある債権も手続き内に取り込まれるので、更生計画に従った弁済しかうけることができません。
2.DIP型更生手続
管理型の更生手続きの場合、従来の経営陣にかわる保全管理人を選任しなければならず、費用も時間もかかることから平成15年4月1日の改正後も会社更生法が利用されることは少なかったようです。
そこで、平成20年末から東京地方裁判所においてDIP型の会社更生手続の運用が行われるようになりました。上場企業が会社更生法の適用を受ける場合は、DIP型更生手続きであることが多いようです。
これは、現経営陣に事業経営を継続させることによって事業価値を毀損しない早期の事業再建が可能となり、ひいては債権者の満足の最大化を図ることができるという考え方によるものです。
ただし、どんな場合にも認められるものではなく、一定の要件を満たしている必要があります。その要件とは以下のようなものです。
①現経営陣に不正行為等の違法な経営責任の問題がないこと
②主要債権者が現経営陣の経営関与に反対していないこと
③スポンサーとなるべき者がいる場合には、その了解があること
④現経営陣の経営関与によって更生手続の適正な遂行が損なわれるような事業が認められないこと
上記の要件が満たされている場合は、更生手続き開始の申し立てがなされた後は、監督委員兼調査委員が選任され、更生手続き開始の決定後は、現経営陣が事業家管財人に選任されて更生手続を遂行し、管財人業務の当否は、更生手続開始の決定後にあらためて選任される調査言いにより調査されることになります。
3.会社更生手続の流れ
原則的な会社更生手続の流れを示すと以下のようになっています。
(1)事前相談
更生手続開始の申立ての2週間程度前から裁判所と申立人との間で相談が行われるのが一般的とのことです。DIP型でない場合は、適切な保全管理人を選任しなければなりませんので準備が必要となります。
(2)更生手続開始の申立ておよび保全管理命令等
通常は更生手続開始の申立てと同時に弁済禁止等の必要な保全処分(会社更生法28条)が発令されるとともに、保全管理命令(会社更生法30条)が発せられ、保全管理人が選任されます。
(3)更生手続き開始の決定等
裁判所は、更生手続の開始原因となる事実があると認めるときは、申し立て棄却事由が存在すると認められる場合を除き、更生手続開始の決定をします(会社更生法41条)。
裁判所は同時に、管財人を選任し、かつ、更生債権等の届出をすべき期間および更生債権等の調査をするための期間を定めます(会社更生法42条1項)。
(4)債権の届出・調査・確定手続
更生手続に参加しようとする更生債権者等は、債権届出期間内に権利の届出をする必要があります(会社更生法138条)。管財人は、届け出られた更生債権等について調査をして認否書を裁判所に提出します。
管財人が認め、かつ一般調査期間内に更生債権者等から異議が述べられなかった更生債権等は届け出通りに確定します(会社更生法150条)。
(5)財産状況の調査等
管財人は、更生手続開始後遅滞なく、更生会社に属する一切の財産につき、更生手続開始時における価額を評定し、更生手続開始時における貸借対照表および財産目録を作成します(会社更生法83条)。
(6)更生計画案の提出、可決および認可
管財人は、債権届出期間満了後、更生計画案を裁判所に提出します(会社更生法184条)。この更生計画案の決議は、更生債権者と更生担保債権者に分けて行われるのが通常で、各組において法定の可決要件を満たした場合には、裁判所は更生計画認可の決定をします(会社更生法199条)
(7)更生計画の遂行および更生手続の終了
更生手続は、裁判所の更生手続終結の決定により終了します。裁判所は、以下の場合に、管財人の申立てまたは職権により更生手続き終結の決定をします(会社更生法239条1項)
①更生計画が遂行された場合
②更生計画の定めによって認められた金銭債権の総額の3分の2以上の弁済がされた時において、当該更生計画に不履行が生じていない場合
③更生計画が遂行されることが確実であると認められる場合
長くなりましたので今回はここまでとします。
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