消費税(その4)-個別対応方式の用途区分2
前回に続いて個別対応方式の用途区分について確認していきます。
1.「課税売上げにのみ要する課税仕入れ等」とは、具体的にどのようなものをいうか
この点について、消費税の基本通達では以下のように述べられています。
(課税資産の譲渡等にのみ要するものの意義)
11-2-12 法30条第2項第1号《個別対応方式による仕入税額控除》に規定する課税資産の譲渡等にのみ要するもの(以下「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」という。)とは、課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等をいい、例えば、次に掲げるものの課税仕入れ等がこれに該当する。なお、当該課税仕入れ等を行った課税期間において当該課税仕入れ等に対応する課税資産の譲渡等があったかどうかは問わないことに留意する。
(1) そのまま他に譲渡される課税資産
(2)課税資産の製造用にのみ消費し、又は使用される原材料、容器、包紙、機械及び装置、工具、器具、備品等
(3)課税資産に係る倉庫料、運送費、広告宣伝費、支払手数料又は支払加工賃等
上記(1)および(2)は、課税売上げと明確な対応関係があるものということなので判断にあまり迷うことはないように思います。
問題は(3)です。
以前の“「課税売上にのみ要するもの」とは具体的にどのようなもの?”というエントリで、課税製品の製造販売しか行っていない工場の中に管理部門がある場合、その管理部門で発生した課税仕入れ等の区分はどうなるのかという点について書きました。
この点について、「経理担当者のための消費税「個別対応方式」適用ガイド(あいわ税理士法人)」では「当社では、工場内に工場を管理する管理部門がありますが、当該管理部門から発生する課税仕入れ等の用途区分はどのように考えるのでしょうか」という問いに対する回答の中で「通常、支店もしくは事業所の中における管理部門の役割は、その支店もしくは事業所内に限定されており、全社的な機能を要するものではないと考えられる」とされています。
つまり、このような場合は、管理部門の課税仕入れ等も「課税売上にのみ要するもの」として問題ないものと考えられるという見解が示されていました。
2.「課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入れ等」とはどのようなものか
いわゆる共通費的なもので、水道光熱費、消耗品費、電話代、全社的な償却性資産などが該当します。ただし、水道光熱費についても、フロアあるいは区画別に金額が把握できる場合は、管理部門などの全社共通部門で使用している分のみをこの区分とすることはできると考えられます。
また、電話代についても電話番号で使用目的を判別し、区分を決定することは可能だとおもいます。典型的には、会社の代表番号は「課税売上と非課税売上に共通して要する」ものになると考えられます。
実務的には、課税売上げにのみ要するもの、非課税売上げにのみ要するもの以外を「課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入れ等」としてとりあつかうことになると考えられます。
3.国外取引に係る課税仕入れ等の用途区分は?
これは、国外取引を行うために必要な課税入れが国内で発生したような場合に、その課税仕入れ等の用途区分はどうなるかです。
結論からすると、「国外取引については、それが国内で行われたとした場合に非課税売上に該当するものであっても、課税売上げに該当することから、そのために必要な国内における課税仕入れ等は、「課税売上にのみ要するもの」に該当することになります」(「経理担当者のための消費税「個別対応方式」適用ガイド(あいわ税理士法人)」)とのことです。
意外な感じがしますが、理屈は以下のとおりです。
消費税法上、「資産の譲渡等」とは、「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう」とされている。
よって、国内に限らず、海外での取引についても、「資産の譲渡等」に該当することになる。
そして、この「資産の譲渡等」から「非課税取引」を除いたものが、「課税資産の譲渡等」に該当する。
一方で、消費税において「非課税取引」とは、「国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない」と規定されており国内取引に限定されている。
したがって、国外取引については、それが国内で行われたとした場合に非課税売上に該当するものであっても、課税売上げに該当するということです。
4.課税売上げにのみ要する固定資産を、その後非課税売上にのみ要するものに転用した場合
個別対応方式を採用し、購入した固定資産を「課税売上にのみ要するもの」として消費税額の計算を行った後、3年以内に「非課税売上にのみ要するもの」に転用した場合には、取得日から転用日までの期間に応じて、控除済み税額の一部をその転用した課税期間における仕入控除税額から控除するという調整計算が必要となります。
調整計算を行う必要があるのは、一取引についての購入価額が税抜100万円以上の固定資産に限られています。
調整する金額は、取得日から転用日までの期間に応じ、次の通りとなっています。
①取得の日から1年以内 控除済み税額の全額
②取得の日から2年以内 控除済み税額の3分の2に相当する額
③取得の日から3年以内 控除済み税額の3分の1に相当する額
なお、逆に非課税売上にのみ要する固定資産を課税売上にのみ要するものに転用した場合も同様に調整計算が行われます。
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