閉じる
閉じる
閉じる
  1. 18監査事務所が会計士資格を誤表記で有報訂正が必要らしい
  2. 内部統制新基準が2025年3月期より適用に(公開草案)
  3. デューデリジェンス(DD)費用の税務上の取り扱い
  4. テレワークの交通費、所得税の非課税限度額適用の有無は本来の勤務地で判断…
  5. プライム市場上場会社、88.1%が英文招集通知を提供
  6. タクシー、インボイス対応か否かは表示灯での表示を検討?
  7. 副業の事業所得該当判断の金額基準はパブコメ多数で見直し
  8. 総会資料の電子提供制度、発送物の主流はアクセス通知+議案等となりそう
  9. 押印後データ交付の場合、作成データのみの保存は不可(伝帳法)
  10. 四半期開示の議論再開(第1回DWG)
閉じる

出る杭はもっと出ろ!

IFRS適用を考慮し8社が決算期変更

「IFRSフォーラム」というサイトに、「IFRS適用で決算期を変更、8社が予定」という記事が掲載されていました。

上記の記事によると、以下の8社がIFRSを睨んで決算期を変更する予定とのことです。

・花王(3月→12月)

・東洋ゴム工業(3月→12月)

・インターライフホールディングス(3月20日→2月末)

・JUKI(3月→12月)

・サイボウズ(1月→12月)

・日本エム・ディ・エム(5月→3月)

・グットマン(6月→3月)

・ダイナミック(9月→12月)

1月あるいは5月決算の会社が3の倍数月に変更するのはよくわかりますが、花王が3月決算から12月決算に変更するというのは意外な感じがしました。

そこで、有価証券報告書の「連結子会社の事業年度等に関する事項」を確認してみると、連結子会社100社のうち89社は12月決算で、仮決算を行わず原則として12月の数値で連結していることがわかりました。

単なる推測ですが、親会社の決算期を変更した理由をIFRSの規定から考えてみます。

まず、決算日の統一についてはIAS27号で規定されていますが、2013年1月1日以降に開始する事業年度からはIFRS10号「連結財務諸表」が適用されることになっているので、IFRS10号の規定で確認することにすると、B92項において以下のように定められています。

「連結財務諸表の作成に用いる親会社及びその子会社の財務諸表は、同じ報告日としなければならない。親会社の報告期間の期末日が子会社と異なる場合には、子会社は、連結のために、親会社の財務諸表と同日現在の追加的な財務情報を作成して、親会社が子会社の財務情報を連結できるようにする。ただし、実務上不可能な場合を除く。」

(英語の原文)

The financial statements of the parent and its subsidiaries used in the preparation of the consolidated financial statements shall have the same reporting date. When the end of the reporting period of the parent is different from that of a subsidiary, the subsidiary prepares, for consolidation purposes, additional financial information as of the same date as the financial statements of the parent to enable the parent to consolidate the financial information of the subsidiary, unless it is impracticable to do so.

続くB93項では、いわゆる3カ月ルールについて以下のように定められています。

「前項のようにすることが実務上不可能な場合には、親会社は子会社の直近の財務諸表を用いて子会社の財務情報を連結しなければならないが、当該財務諸表の日付と連結財務諸表の日付との間に生じる重要な取引又は事象の影響について調整する。いかなる場合でも、子会社の財務諸表と連結財務諸表の日付の差異は3か月を超えてはならず、報告期間の長さ及び財務諸表の日付の差異は毎期同一でなければならない。

(英語の原文)

If it is impracticable to do so, the parent shall consolidate the financial information of the subsidiary using the most recent financial statements of the subsidiary adjusted for the effects of significant transactions or events that occur between the date of those financial statements and the date of the consolidated financial statements. In any case, the difference between the date of the subsidiary’s financial statements and that of the consolidated financial statements shall be no more than three months, and the length of the reporting periods and any difference between the dates of the financial statements shall be the same from period to period.

上記からすると、

原則として連結各社の決算期は統一しなければならないものの、「実務上不可能な場合」には、追加的財務諸表を作成することで対応することができる。また、決算日の差異が3カ月以内であれば、当該差異の期間の間に生じた重要な取引を調整することを条件として、異なる決算日の財務諸表を使用して連結することができる、

ということになると思います。

ここで、まず問題となるのは「実務上不可能な場合」とは何かですが、「IFRS国際会計基準の初度適用(新日本有限責任監査法人)」では、「・・・IAS第1号第7項で説明されているものと同様であると推定される。すなわち、企業がある定めを適用するためにあらゆる合理的な努力を払った後にも、適用することができない場合であるとされており、厳格な解釈が必要とされている。」と説明されています。

したがって、中国の場合のように制度的に12月決算しか認められないような場合をのぞくと、決算期を統一することが、あらゆる合理的な努力を払ったとしても不可能であるといえるケースはあまりないと考えらます。

このため、花王のケースでは、親会社の決算期に統一しようとするとほとんどの子会社の決算期を変更しなければならないということになり、そうであれば3月決算の会社を12月決算にしたほうが全体の負担は少ないというような判断がされたのではないかと思います。

なお、子会社の決算期が異なる場合には、「親会社の財務諸表と同日現在の追加的な財務情報を作成」する必要がありますが、ここでいう「追加的な財務情報」は本決算と同様の制度のものが求められると考えられます。

そうであるとすると、決算期の異なる子会社は、本決算を2度やらなければならないということになり事務負担がかなり重くなると考えられます。

もっとも、親会社が3月決算、子会社が12月決算である場合には、決算日の差異が3カ月以内であるので、子会社の12月の財務諸表をベースとすることができますが、12月から3月に生じた重要な取引又は事象について調整を行う必要があります。

ここでの注意点は、日本基準だとグループ内の取引で重要なものの調整が求められているのに対して、IFRS10号では連結グループ内の取引に限定されていないため、外部取引についても重要な取引であれば調整が必要となります。

したがって、決算期が統一されていない比較的規模の大きな子会社が存在する場合、連結上行わなければならない調整が発生することが見込まれ、事務処理が煩雑になることが予想されます。

以上のような点を総合的に判断したうえで、

①親会社の決算期に統一する

②子会社で連結財務諸表用に精度の高い決算をおこなう

③子会社の決算期との差が3カ月以内であれば、その財務諸表をベースに重要な調整を加える

④子会社の決算期に統一する

のいずれかを選択することになると考えられます。

花王は、総合的に④を選択したということではないかと考えられます。今後も、IFRSの適用を考慮して決算期を変更する会社が出てくるのではないかと思います。

日々成長

関連記事

  1. 日本基準で連結範囲の変更が認められIFRSの任意適用を延期-GC…

  2. 個別引当の貸倒引当金はスケジューリング可能 or 不能?-繰延税…

  3. 「平成23年12月改正 法人の減価償却の改正に関するQ&A」が国…

  4. 法定実効税率の変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の開示例(そ…

  5. 「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」の改正

  6. 平成23年税制改正 減価償却費-200%定率法適用の経過措置




カテゴリー

最近の記事

ブログ統計情報

  • 12,923,613 アクセス
ページ上部へ戻る