ニューヨーク証券取引所の上場を取りやめても米国基準を適用
日立製作所は2012年3月30日に米国預託証券(米国で外国会社の株式を流通させるために発行される、当該株式の権利を表章する証券)の上場廃止をニューヨーク証券取引所(NYSE)に申請することを決定したという発表を行いました。
上場を廃止する理由としては、以下のように述べられています。
「NYSE上場後、日本の証券市場の国際化が進展し、外国人投資家の日本市場での株式取引が大幅に増加したことや、日本の法令改正などにより日米における開示や内部統制に関する規制の差異解消が進展したことなど、証券市場を巡る環境には大きな変化がありました。
今般、当社は、これらの環境変化を踏まえた上で、NYSEにおける当社ADRの取引高が少ないことから、上場を維持する経済合理性が低下したと判断し、上場継続に伴うコスト負担を解消して、更なる収益向上を推進するため、NYSE上場廃止およびSEC登録廃止の申請を行うことを決定しました」
そこで、日経会社情報2012春号で日立製作所の外国人株主の割合を調べてみたところ、36.6%となっており外国人株主の比率は高い方だといえそうです。ちなみに米国基準で財務諸表を作成してる他社の外国人株主の割合は以下のようになっていました。
・東芝 26.6%
・SONY 42.8%
・富士フイルムホールディング 37.6%
このような状況下で、NYSEにおける当社ADRの取引高が少ないということであれば、実質的にNYSEに上場している意義は乏しいといえそうです。
ただし、おそらくADRの取引高が少ないという状況は以前からそれほど変化はないのではないかと思いますので、NYSEに上場しているというステータスを捨てなければならないほど追い込まれているというのが実態なのかもしれません。
日立製作所のIR情報で提供されている過去10年間の財務情報を用いて、当社に帰属する当期純利益(損失)を10年分合計するといくら位になっているか想像がつくでしょうか?
2002年3月期から2011年3月期の累計はなんと!
△1,097,631百万円です。
わかり易く表記すると、1兆976億円の損失です。ある意味、これで倒産していないということがすごいことですが、なりふり構っていられないというのが実態ではないかと思います。
ところで、NYSEの上場が廃止されたら、財務諸表は日本基準で作成することになるのかが気になりますが、この点については米国基準で引き続き財務諸表を作成するそうです。
日本の市場でしか上場しなくなっても米国基準での財務諸表の作成が認められるというのはなんとなくおかしな気はしますが、とにかく継続適用が認められるということのようです。
最後に、日立製作所のリリースではニューヨーク市場の上場廃止と合わせて、札幌と福岡の証券所も上場廃止とする旨が公表されています。
NYSEに比べてインパクトはありませんが、札幌と福岡の両市場にとっては、大企業が一社消えるわけなのでインパクトがあるのではないかと思います。
日々成長。