消費税(その13)-課税売上割合の算出3
今回は“消費税(その12)-課税売上割合2”の続きです。
前回は、課税売上割合の算定にあたり注意すべき取引(会計処理等)として「経理担当者のための消費税「個別対応方式」適用ガイド あいわ税理士法人」で取り上げられている項目のうち、受取利息と有価証券の譲渡に触れたので、今回はそれ以外の項目についてまとめます。
(3)券面額より低い価額で購入した債券が券面額で償還された場合の取扱い
全体からすれば多くはないのかもしれませんが、余剰資金を安全性の高い債券で運用しているというケースや、中小企業であってもワリショーなんかを持っていたりするケースが該当します。
有価証券を譲渡した場合は、譲渡対価×5%が非課税売上として取り扱われることになりますが、満期により生じた償還益はどのように取り扱うかという問題です。
この場合は、その償還差益「額面金額-取得価額」」が対価となり、その実質的な性格は預金利息に類似しているものとして、その償還差益を非課税売上として計上することになります(消法6①、消法別表第1三、消令10③六、48④⑤、消基通6-3-1(八))。
安全性の高い債券であれば単に償還差益の取扱いを間違えないようにというだけですが、例えば、額面の半額程度で取引されている東京電力の長期物の社債を購入し、将来幸運(?)にも額面で償還されそうだという場合には満期の少し前に売却するのと満期まで保有するので消費税法上は非課税売上として取り扱われる額が変わるということになりそうなので、頭の片隅におくとよいのではないかと思います。
もっとも、将来、消費税法は変わっている可能性は十分にありますが・・・
(4)債権についてアキュムレーション又はアモチゼーションを採用している場合
企業会計上は、「額面金額-取得価額」の差額が金利の調整と認められる場合には、償却原価法により処理を行う(アキュムレーション又はアモチゼーションを行う)必要があります。
また、法人税法上も「額面金額-取得価額」を償却原価法により益金に計上することが求められています(法人税法上は、差額が金利の調整と認められる場合という限定がないように思いますが、ある会社の顧問税理士さんに確認したところ税務相談で確認した結果、会計と同じように処理していいと言われたとのことでした)。
一方で、消費税法上は、償還を受けた日に償還差益の全額を非課税売上として計上するのが原則とされています。
しかしながら、企業会計や法人税法との調整が煩雑になることへの配慮から、償還差益を期間の経過に応じて非課税売上とすることも認められています(消令139の2①、消基通6-3-2の2、9-1-19の2)。
(5)売上割引・仕入割引があった場合
今まであまり意識したことがありませんでしたが、売上割引や仕入割引があった場合の消費税の処理についてです。
会計的には、売上割引も仕入割引も利息のようなものとして営業外損益として処理されます。
一方で消費税法上、売上割引は、その支払の原因が売上代金の回収であり、売上割戻しと同様の性格と考えられるため、売上に係る対価の変換等として課税標準額に対する消費税額から控除することとされています(消法38①、消基通14-1-4)。
また、同様に、仕入割引は、仕入割戻しと同様の性格と考えられるため、仕入れに係る対価の変換等として割引をした金額に係る消費税を課税仕入れ等の税額から控除することとされています(消法32①、消基通12-1-4)。
このように会計と明らかに考え方が違う箇所は要注意ですね。勉強になりました。
(6)売掛金について貸倒処理をした場合
売掛金の貸倒れがあった場合には、その貸倒れに係る消費税額をその課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除することができますが、課税売上割合の計算には影響しません。
これは、貸倒れに係る消費税は「課税期間の課税標準額に対する消費税額」から控除されるのであって、課税売上割合に影響する「資産の譲渡等の対価の額」および「課税資産の譲渡等の対価の額」から控除することはされていないためです。
一連のエントリで予定していたもので、残すは課税売上割合に準ずる割合だけとなりましたが、今回は区切りがよいのでここまでとします。
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