消費税(その8)-個別対応方式勘定別留意点2
前回のエントリに引き続き『消費税「個別対応方式」適用ガイド』(あいわ税理士法人)において、個別対応方式の勘定科目別論点として取り上げられた項目で重要そうな点についてまとめます。
なお以下では、便宜上
「課税売上にのみ要するもの」を「課税扱い」
「課税売上と非課税売上に共通して要するもの」を「共通扱い」
「非課税売上にのみようするもの」を「非課税扱い」
と表記している箇所があります。
4.修繕費
(1)建物の撤去費用
建物の撤去費用は、建物を撤去する目的によって用途区分を決定する必要があります。
従来どのように使われていたかで用途区分を判断してしまいそうですが、あくまで建物を撤去する目的で用途区分を判断するという点に気を付ける必要がありそうです。
つまり、例えば「撤去後に貸ビル建築を予定している場合には、貸ビルの賃貸売上と明確な対応関係があり「課税売上にのみ要するもの」に区分され」、「撤去後に土地の売却を予定している場合には、土地の譲渡と明確な対応関係があり「非課税売上げにのみ要するもの」に区分され」ることになります。
では類似しているケースで、賃借している土地の上に建設されている工場を閉鎖により撤去した場合の撤去費用はどうなるか?
ややこしいですが、この場合は工場の閉鎖が目的となるので、「その工場で課税製品の製造を行っていたのであれば「課税売上にのみ要するもの」に、非課税製品の製造を行っていたのであれば「非課税売上げにのみ要するもの」に区分されます」とされています。
(2)保険会社から保険金を収受して修繕工事を行った場合の修繕費
保険金を受け取って修繕を行った場合であっても、その支出した費用の内容に応じて用途区分することになります。したがって、例えば、修繕対象が、課税製品の製造のみに使用される機械であれば課税扱いとなります。
ここでの注意点は、「保険会社が直接修理会社に修繕費を支払った場合であっても、その実態は保険会社から保険金を収受して、それを原資として修繕工事を行った場合と変わらない」ので、同様に判断が求められるという点です。
よくありそうなのは、社用車を車両保険を使って修理したようなケースではないかと思います。車両保険を使用した場合、通常、修理業者への支払いは保険会社が直接行ってくれて、5万円とか10万円の免責部分のみ支払いが必要となることが多いのではないかと思います。
この場合、この免責部分の支払額のみを考えるのではなく、保険会社が直接支払った分も含めて考えなければならないということになります。この点については、以前“自動車保険の免責部分は消費税の課税対象?”というエントリで書いたことがあるので、興味のある方はそちらをご覧ください。
なお、従来は、免責部分だけを処理したとしても仮払消費税が少なくなるだけだったので税務調査でひっかかるということもなかったのではないかと考えられますが、今後は保険料収入を適切に認識しないと課税売上割合の算定に影響してきますので、納付すべき消費税が増加する可能性もあり注意が必要だと思われます。
5.広告宣伝費
基本的な考え方は同じで、広告の目的によって用途区分が決まります。
例えば、課税商品のためのチラシやパンフレットを制作するために要した費用であれば、課税扱いとなりますが、不動産会社が居住用マンションの賃貸物件のみを対象とした広告を作成した場合には全額が非課税扱いとなります。
また、会社案内や企業広告については共通扱いとなります。
広告の用途区分については、広告の内容が企業広告なのか商品広告なのか判断しにくいものもあるように思いますので、今後の動向に注意が必要ではないかと思います。
6.採用費・教育費
(1)新卒採用
原則としては共通扱いとなるとされています。
ただし、「採用活動を製造部門等、課税売上に係る部門が単独で行い、かつ、その採用活動に関する裁量権も当該部門が有しているのであれば、採用支出時点においてその目的が明らかであるとして「課税売上にのみようするもの」に区分することは可能であると考えます。」とされています。
(2)原価部門の人員を採用するための人材紹介料
この点については「その採用社が原価部門所属の人員となる前提のもの採用活動をしていたのであれば、この費用はその原価部門に係る課税製品の製造のために必要なものとして「課税売上にのみ要するもの」に区分することは可能であると考えます。」とされています。
最近では、人材紹介に限らず、紹介予定派遣や、新卒の紹介など行われているので参考になるのではないかと思います。
7.試験研究費
直接製品の売上に結びつくかは不明であるものの、将来の売上増加等を目的とするものであるので、基礎研究・応用研究とも課税製品の販売のみを行う会社が行った試験研究費は課税扱いに区分されます。
日々成長。