消費税(その12)-課税売上割合の算出2
前回に引き続き、消費税の課税売上割合に関連する事項について確認します。
前回記載したとおり、課税売上割合は以下のように算出されます。
したがって、非課税売上にも注意が必要ということですが、課税か非課税かで間違えるというよりも、経理処理方法によって非課税売上の集計金額を間違えるリスクがあるのではないかというのは前回記載したとおりです。
1.非課税取引と不課税取引
ここでもう一つ確認しておくべきなのは「不課税取引」についてではないかと思います。課税売上割合が95%以上である会社の場合、従来は「非課税取引」であっても「不課税取引」であっても、消費税がかからない取引くらいの認識でも問題なかったのではないかと思います。
ところが、課税売上割合の算出にあたり、非課税売上は分母に含まれることになりますが、不課税売上は課税売上割合に影響しません。
これは、「不課税取引」が消費税に全く関係しない取引であることによるものです。
間違えると課税売上割合の算定に影響するという観点から不課税売上となるものの例を挙げると以下のような項目が該当します。
・配当金の受取
・保険金の受取
・損害賠償金の受取
・寄付や贈与の受取
仮にこれらの項目を非課税売上としてしても、課税売上割合があるべき値よりも小さく計算されることになって、会社に不利となるので税務調査で問題となることはないのかもしれませんが、払わなくていい税金を払うことになるという観点からは注意が必要です。
また、不課税取引を意識するようになると、今度は逆に本来「非課税売上」である「受取利息」を「不課税売上」としてしまうようなミスもでてくる可能性があって、実務担当者としてはつらいところではないかと思います。
2.課税売上割合の端数処理
細かい論点ですが、課税売上割合を算出するときの端数処理については、消費税基本通達11-5-6で以下のように述べられています。
「課税売上割合については、原則として、端数処理は行わないのであるが、事業者がその生じた端数を切り捨てているときは、これを認める。」
端数を切り捨てた割合を使用することが容認されていますが、特に小数点何位以下というような指示はありませんので、任意の位で切り捨てた割合を使用することができるということのようです。
消費税の申告ソフトを使用している場合は、あまり気にする必要はないかもしれませんが、四捨五入は認められないという点は一応注意が必要です。
3.課税売上割合算出で注意すべき取引(会計処理等)
前回、社宅の従業員負担分の会計処理を費用項目のマイナスとして処理している場合に、課税売上割合の算出時に従業員負担分を非課税売上として考慮することを忘れないように注意が必要という点は書きましたが、同様に注意が必要な項目を確認します。
(1)預金の受取利息の計上方法
きちんと預金の受取利息を源泉前の金額で計上している会社(上場会社は多分大丈夫ではないかと思います)は問題ありませんが、源泉後の手取額で受取利息を計上している会社は注意が必要となります。
例えば、普通預金の受取利息が1,000円、源泉後の手取りが800円であった場合に、税後の800円で受取利息を計上していたとしても、非課税売上の金額は1,000円が正しい金額となるので課税売上割合の計算を間違わないように注意が必要です。
仮に純額方式で記帳している場合には、いずれにしても消費税の計算上考慮が必要となるので、記帳方法を改めるということを検討する必要があるのではないかと思います。
(2)有価証券の譲渡
有価証券(典型的には株式)の譲渡についても、それなりの頻度で売買を行っているような会社にとっては目新しいことはありませんが、有価証券の譲渡も非課税売上となります。
ただし、有価証券のうち以下に該当するものの譲渡については、その有価証券等に係る譲渡対価の額の5%だけが非課税売上となるとされています。
①国債、地方債証券
②社債券
③株券又は新株予約権証券
④投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資信託又は外国投資信託の受益証券
⑤貸付信託の受益証券
⑥預託証券
5%相当分のみといっても、それなりに影響が大きいこともありますので注意が必要です。
有価証券に関連する論点が、他にいくつかありますが、次回以降に譲ることとして今回はここまでとします。
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