「第二会社方式」とは?(その3)
少し間隔が空きましたが、“「第二会社方式」とは?(その2)”の続きです。
第二会社方式とは「会社の分割又は事業の譲渡によりその事業の全部または一部を承継させるとともに、事業者が承継した事業について、収支の改善その他の強化を図ることにより、事業の再生を図ること」を意味しています。
したがって、第二会社方式の手法の一つとして会社分割が使用されるという関係にあると言えますが、会社分割との比較で、第二会社方式を確認していきます。
第二会社方式は、以下の三点で大きく会社分割と異なります。
①事業譲渡方式が含まれている点
②事前に債権者の同意を得るための手続きが含まれている点
③経済産業大臣の認定を得られれば行政便益が得られる点
①については、前述のとおり会社分割は第二会社方式を実現するための一つの手法であるという関係にあるということです。
②については、会社分割と大きく異なる点です。この点については、「そもそも、実務の観点からみると、そんなことは不可能です。倒産の危機に瀕した債務者が、債権者である銀行に向かって、『これから会社を分割し、収益性のある事業部門を新会社に移しますから了解して下さい』と懇願しても、銀行が『了解しました』というはずがないのはいうまでもないからです」(「会社分割 第6版」後藤孝典 著)という見解があります。
反対意見もあるかもしれませんが、第二会社方式自体に、債権者の同意を得るため画期的な手続きが含まれているわけではない以上、普通に考えると後藤氏の意見は妥当に思えます。一方で、会社分割については債権者の同意を得なくても可能です。一見すると、不合理な感じがするかもしれませんが、会社分割の場合、分割会社は切り離した事業等に見合う対価を受領することになりますので、基本的に分割前後で分割会社の財産に変動は生じないと考えられるためです。
したがって、この点では会社分割の方が使い勝手がよいと言えそうです。
③については、通常の会社分割にはない第二会社方式のメリットと言えますが、上記②の問題をクリアしなければならないので、ハードルは高そうです。
また“「第二会社方式」とは?(その1)”で書いた産業活力再生法による中小企業承継事業再生計画が認定を受けるために満たさなければならない要件の一つである「中小企業承継事業再生計画に係る中小企業承継事業再生が円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること」には以下のものが含まれます。
上記の「5 第二会社の事業実施における資金調達計画が適切に作成されていること」ですが、「もともと『第二会社方式』においては、旧会社に残留させた金融債務を返済しない計画ですから、第二会社は、出発時点から金融が得にくい環境下にあるのです。とくに、返済しない計画である当の債務についての債権者から金融を期待することは、およそお人好しの金融機関であっても、まず不可能とみるのが当たり前です。」(「会社分割 第6版」後藤孝典 著)という見解があります。
また、「会社分割 第6版」では、第二会社方式には、債務者会社の代表者個人らの連帯保証責任をどのように解消するかについて、何の方策も規定されていないところに重大な欠陥があるとしています。
つまり、「個人については、別個に、破産か民事再生の申し立てをすることも考えられないわけではありませんが、煩雑なので会社と同時処理を図りたいとすれば、現行法上破産しかないことになります。」ということです。
“2011年の中小企業白書によると、民事再生を申請した中小企業は、約8割が個人資産より多い個人保証債務を負っており、取引金融機関が多くなればなるほど、最終的には個人で破産手続きを行う割合が増えるという傾向にあります。 なお、個人保証債務を法的整理でなく私的整理によった場合ですが、この場合に個人保証がすべてなくなったという経営者は全体の17.8%で、すべて残っているが24.3%、半分以上残っているが43.8%という回答結果となっています。
以上の結果からすると、個人保証債務から解放されるためには法的整理を選択せざるをえないというのが実態のようです。
一方で会社分割においては、主債務者について法的処理をとること自体が任意なので、連帯保証責任の処理についても、はるかに幅の広い解決法をとることが可能になるとのことです。
以上のような点を考慮すると、第二会社方式を使用したほうがよいというケースはかなり限定的といえそうです。
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