合理的見積計上による損金経理も可能-控除対象外消費税
今週号の税務通信をみて、少し前の税務通信に掲載されていた「損金経理は合理的な基準での見積計上でも可」という記事を見逃していたことに気づきました。
上記の記事によると、資産に係る控除対象外消費税額等については、損金経理の要件が課せられているが、「前年度の課税売上割合など合理的な数値によって見積もった当年度に発生する控除対象外消費税等を損金経理している場合、その損金経理額は税務上、容認される」とされています。
課税売上高が5億円超の事業者については、いわゆる95%ルールが撤廃されたことにより、従来は仮払消費税額を全額仕入税額控除として控除できていた事業者であっても、今後は控除できない部分が発生することになります。
この控除できない消費税部分は、以下の二つに区分されます。
①費用に係る控除対象外消費税額等
②資産に係る控除対象外消費税額等
そして、①と②は法人税法上の取扱いが異なります。
①費用に係る控除対象が消費税額等
・損金経理が損金算入するため要件とはなっていない。
・課税売上割合にかかわらず、控除できなかった全額を損金算入することができる。ただし、交際費等に係る控除対象外消費税額等に相当する金額は交際費等の額として、交際費等の損金不算入額を計算する必要があります。
②資産に係る控除対象が消費税額等
・損金経理が損金算入のためのための要件となっている。
・課税売上割合が80%以上かどうかによって取扱いが異なる
<課税売上割合が80%以上の場合の取扱い>
課税売上割合が80%以上であれば、当年度において損金経理した額は、資産の取得価額にかかわらず全額損金算入することができます。損金経理しなかった額については、当年度において繰延消費税額等として資産計上され、基本的に毎年1/5ずつ損金算入することになります。
まとめると、以下のようになります。
上記で、基本的に5年としているのは、発生年度に損金算入できる金額の計算方法が以下のようになっているためです。
当期発生分の控除対象外消費税額等÷60×当期の月数×1/2
したがって、結果的には6事業年度にわたり損金算入されるということになります。
<課税売上割合が80%未満の場合の取扱い>
この場合、一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円以上である場合には、上記で損金経理しなかった場合と同様の処理となします。つまり、当年度において繰延消費税額等として資産計上され、基本的に毎年1/5ずつ損金算入することになります。
ここまでを前提知識として、実務上の問題は、課税売上割合が80%以上ではあるものの、上場会社や上場会社の子会社の場合は決算スケジュールの関係上、控除対象外消費税額等を厳密に計算するのが困難な場合に、合理的な基準での見積額により損金経理を行った場合に損金算入要件を満たせるのか?という点にあります。
冒頭に記載のとおり、合理的な基準での見積額による損金経理も認められるわけですが、具体的には「前年度実績などの数値で算出した当年度控除対象外消費税額等に対する損金経理」などが合理的な基準に該当するようです。
そして、控除対象外消費税額等の確定額と見積額の差額については、以下のように処理する必要があります。
(1)損金経理した見積額>確定額
この場合は、本来損金算入可能な金額以上に損金経理してしまっているので、確定額を超過する分を申告加算することになります。これは、イメージしやすいのではないかと思います。
(2)損金経理した見積額<確定額
この場合は、確定額との差額を繰延消費税額等として資産計上し、損金経理により翌年度以降5年間で損金算入することになります。つまり、資産に係る控除対象外消費税額等については、損金経理が損金算入の要件となっているため、損金経理されていない金額は繰延消費税額等となってしまうということです。
多少不合理な気もしますが、そう定めれられている以上は仕方がありません。
以上のことからすると、税務上は損金経理した見積額>確定額という状況を作り出しておいた方が有利と考えられますが、「合理的な基準での見積額」である必要があるという点を忘れないようにする必要がありそうです。
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