特定目的会社に関する連結範囲の変更ー不動産開発会社への影響は大きいようです
経営財務3077号で「特別目的会社に関する連結範囲の変更」という記事が掲載されており、特別目的会社を利用して商業施設の開発を行う不動産会社への影響が大きいという旨が述べられていました。
個人的にはあまり関係なさそうですが、話題になっているようなので、簡単に内容を確認しておきます。
そもそも、特別目的会社に関する連結範囲の変更は、昨年3月に行われた連結会計基準の改正による影響によるものです。ただし、この会計基準の強制適用は平成24年4月1日以降開始事業年度からとされているため、3月決算の会社の場合は、来期から強制適用となります。一方で、早期適用も認められており、早期適用をする会社が少しずつ出てきているとのことです。
まず、具体的に何が変わったのかについて確認しておきます。。連結会計基準改正前は「連結財務諸表制度における子会社及び関係会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い」の三において特別目的会社について以下のように定めされていました
特別目的会社(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(平成10年法律第105号)第2条第2項に規定する特定目的会社及び事業内容の変更が制限されているこれと同様の事業を営む事業体をいう。以下同じ。)については、適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者に享受させることを目的として設立されており、当該特別目的会社の事業がその目的に従って適切に遂行されているときは、当該特別目的会社に対する出資者及び当該特別目的会社に資産を譲渡した会社(以下「出資者等」という。)から独立しているものと認め、上記一にかかわらず、出資者等の子会社に該当しないものと推定する。
上記の取扱いが改正され連結会計基準7-2項では以下のように、出資者等の子会社に該当しないものと推定される範囲から「出資者」が除外され、資産を譲渡しているもののみに限定されることとなりました。
7-2. 前項にかかわらず、特別目的会社(資産の流動化に関する法律(平成10年法律第105号)第2条第3項に規定する特定目的会社及び事業内容の変更が制限されているこれと同様の事業を営む事業体をいう。以下同じ。)については、適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者に享受させることを目的として設立されており、当該特別目的会社の事業がその目的に従って適切に遂行されているときは、当該特別目的会社に資産を譲渡した企業から独立しているものと認め、当該特別目的会社に資産を譲渡した企業の子会社に該当しないものと推定する。
念のため記載しておくと、連結会計基準54-2項において「当該出資者に係る定めを削除し、資産を譲渡した企業(当該企業が出資者を兼ねている場合を含む。)に限定することとした」とされていることから、出資者兼資産の譲渡者の場合は7-2項の取扱いの適用対象となります。
上記の改正を受けて、住友不動産、三井不動産、三菱地所などが改正連結会計基準の早期適用しています。各社の開示内容は以下のようになっています。
(1)住友不動産 平成24年3月期 有価証券報告書
【会計方針の変更】
(連結財務諸表に関する会計基準等の早期適用)
「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成23年3月25日)、「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第15号 平成23年3月25日)、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号 平成23年3月25日)および「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第20号 平成23年3月25日)が平成23年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用できることになったことに伴い、当連結会計年度においてこれらの会計基準等を適用し、汐留浜離宮特定目的会社等の特定目的会社23社および1匿名組合を新たに連結子会社としました。
新たに連結子会社となる汐留浜離宮特定目的会社等への会計基準等の適用については、「連結財務諸表に関する会計基準」第44-4項(3)に定める経過的な扱いに従っており、適用初年度の期首において汐留浜離宮特定目的会社等に関する資産及び負債を、連結財務諸表上過年度から当社と同一の会計方針を適用していたものとした場合に算定される適正な帳簿価額により評価しております。
この結果、当連結会計年度の期首の利益剰余金が19,385百万円減少しております。
(2)三菱地所 平成25年3月期 第1四半期報告書
【会計方針の変更等】
(SPC連結に関する会計方針の変更)
当第1四半期連結累計期間より、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成23年3月25日)、「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第15号 平成23年3月25日)、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号 平成23年3月25日)及び「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第20号 平成23年3月25日)を早期適用しております。
会計基準等の適用については、「連結財務諸表に関する会計基準」第44-4項(3)に定める経過的な扱いに従っており、適用初年度の期首において新たな連結子会社に関する資産、負債及び少数株主持分を連結財務諸表上の適正な帳簿価額により評価しております。
これにより、当第1四半期連結会計期間の期首の利益剰余金が3,530百万円減少しております。
(3)三菱地所 平成25年3月期 第1四半期報告書
(会計方針の変更)
「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号 平成23年3月25日)、「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第15号 平成23年3月25日)、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号 平成23年3月25日)及び「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第20号 平成23年3月25日)が平成23年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用できることになったことに伴い、当第1四半期連結会計期間よりこれらの会計基準等を適用し、新宿六丁目特定目的会社、大手町デベロップメント特定目的会社、豊洲3の1特定目的会社、新宿六丁目S街区開発特定目的会社等、計6社を新たに連結子会社としました。
新たに連結子会社となる新宿六丁目特定目的会社、大手町デベロップメント特定目的会社、豊洲3の1特定目的会社、新宿六丁目S街区開発特定目的会社等、計6社への会計基準等の適用については、「連結財務諸表に関する会計基準」第44-4項(4)に定める経過的な扱いに従っており、適用初年度の期首において新宿六丁目特定目的会社等に関する資産及び負債の全てを時価により評価しております。
この結果、当第1四半期連結会計期間の期首の利益剰余金が89,146百万円減少しております。
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