さっさと不況を終わらせるには?-「さっさと不況を終わらせろ」(ポール・クルーグマン著)
ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏が書いた「さっさと不況を終わらせろ」(山形浩生訳)という本が気になったので読んでみました。
この本は、経済学者が書いているものの難解な数式が登場することはなく、現在の不況を終わらせるにはどうすればよいかという方策が述べられています。
結論としては、これ以上金利を引き下げることができない以上、財政支出を景気が回復するまで徹底的に行うべきという主張が一貫して行われています。そして、今は財政赤字を期にすべき時ではないのに、緊縮財政が当然のごとく目指されていることが問題だとしています。
ただし、この本で述べれれている中心は米国で、ヨーロッパの状況についてもそれなりに触れられていますが、「日本」についてはほとんど登場しませんが、日本においては例外とも書かれてはいません。
でも、財政赤字が拡大し負債が増加していくのは、将来にツケを残すので心配すべきでは?という問いに対しては、「その通り、ではありますが・・・」としつつ、経済的な停滞が解消されるまでに絶対に必要な支出により増加した負債は、そんなに急いで返済する必要はないし、インフレと経済成長の合計よりも負債額の伸び率が低ければ負債の増加は特に問題とはならないとしています。
個人あるいは企業は、不景気に直面して負債の圧縮を図り手元資金の流動性を確保しようとし、これらの行動は個々の経済主体からすれば合理的な対応ではありますが、一方で消費や投資が減少することにより、経済全体では、さらに景気悪化につながるという悪循環が生じます。このような状況下で、支出を増加させることができるのは政府しかいないのだから、政府が真に景気回復するまで財政支出を行うべきとしています。
他国に比して国家債務の対GDP比率が飛びぬけている日本で、本当に赤字を拡大していってよいのかは不安になりますが、長期金利が0.8%程度で推移している現状からすると、ほとんど誰も景気が良くなるとは思っていないということだと思います。一方で、経済が成長しなくても医療費や年金などの関係で社会保障費は増加していくことは容易に想像できます。当然のごとく現役世代に保険料の増加や税負担の増加が求めれらてくることになると考えられますが、そうはいっても限界がありますので、最終的には国が面倒をみるということになり、さらに財政赤字が拡大することが見込まれます。
そうなれば、いずれにしても困った事態になってしまうので、覚悟を決めて徹底的に財政支出を拡大していくということをやってみるというのもありなのではないかと思います。仮に、失敗してインフレを招いても、ある程度のインフレならかえって景気は良くなるでしょうし、激しいインフレであっても負債がリセットされます。ただ、激しいインフレに高齢化した日本が耐えられるのかという疑問はあります。
財政支出というと、私だけかもしれませんが、一部の利権者の欲望を満たすために無駄なものを作っているという悪いイメージあるように思います。あるいは、道路を掘って埋めるだけでもよいというような説明がなされたりするので、一層無駄遣いというイメージをもってしまいます。無駄に道路を掘って埋めているだけだとしても、何も仕事がない状況と比較すれば経済効果があるのは事実ですが、そうはいっても何に使うかというのは国民の理解を得るうえでも重要ではないかと考えます。
インフラの整備は将来世代の資産にもなるというのは事実だと思いますが、「資産」と呼べる利用価値のあるインフラであることは重要だと思います。
自分なら何をやる?と思いつきで考えてみると、
①日本海側に青森から山口まで新幹線を作る。さらに北海道の海沿いと道央に新幹線を通して、本土から新幹線をつなぐ。青函トンネルを使えないのであれば、新たにトンネルを掘る
②富士山にゴンドラを建設する
③羽田空港の国際線ターミナルを拡大して、アジアのハブ空港をめざす
④原発をやめるのであれば、省エネ化あるいは環境対策への投資促進
⑤原発を継続するのであれば、古い原子炉を新しい設計思想で建築し直す
⑥震災孤児たちへの支援
⑦日本・韓国間に橋をかける(トンネルでも可)
などが思い浮かびました。①~③は日本人にとっても移動が便利になりますし、海外観光客あるいはビジネスを呼び込むうえでは必要ではないかと思います。
原発関連でいえば、今回の震災を踏まえて設計思想を改めた新しい原子炉を建設するということになれば、東芝か日立が受注することになると思いますので経済効果は大きいのではないかと思います。ただし、現実的には難しそうなので、そうであれば省エネと環境対策を徹底するための産業の発展に資金を突っ込むということが有用なのではないかと思います。
⑥については、震災孤児に限る必要はないですが、がんばる意欲がある人間が将来自分がやりたいことをあきらめなくて済むように支援するという仕組みは必要だと思います。この他、失業保険の給付を延長したり職業訓練を充実させるということも考えられます。
最後の日韓間の橋というのは、国交を絶つ位の覚悟がないのであれば、お互い小さな島を巡っていがみ合っているよりも、橋だかトンネルだかを作って交流を促進したほうが有益なのではないかと思います。
景気対策としての財政支出は、ある程度の経済性が見込めれば国民に夢を与えるようなものがよいのではないかと思います。このまま、行ってもジリ貧な未来が想像されるので、早い段階で勝負にでてもらいたいと思います。
日々成長