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包括利益の表示に関する会計基準の復習(設例2)

”包括利益の表示に関する会計基準の復習(設例1)”から少し間が空きましたが、今回は「設例2」の内容を確認します。
「設例1」と比較すると、外部株主が存在する子会社でもその他有価証券の売却が生じるという状況が加わっています。

設例2で示されている前提条件は以下のようになっています。

前提条件は続きますが、とりあえず一度ここで区切ります。
ここまでの前提条件は、期首・期末の評価差額金の残高や組替調整額の金額が類似していますが、A社株の売却益の金額が150になっていたり、B社株に減損50が発生していたりするので、評価差額金の内訳は設例1と切り離して考える必要があります。

例えば、以下のような状況をイメージすればよいと考えらえます。

①A社株式は期首時点の含み益(評価差額金)100から期中さらに50時価が上昇した時点で売却した。売却しているので、期末時点の評価損益は0となっている。

②B社株式は期首時点で10の含み損であったが、さらに時価が40下落し、期末に50の減損計上が必要となった。期末に減損損失を計上していることにより、期末時点の評価損益は0となる。なお、期首時点の含み損に対して繰延税金資産が計上されていたものとする。

③C社株式については、期首時点で1,410であった含み益が、時価の上昇(590)により期末時点では2,000となっている。

前提条件に戻ります。子会社のその他有価証券関係の情報が続きます。


連結開始時の時価評価による調整はないという前提なので、前提条件として目新しいものはありません。
ただし、外部株主が30%存在することによって、少数株主持分が生じるという点が親会社のケースと大きく異なる点となっています。このため、[その他有価証券の評価損益の増減内訳]の一番下に「うち親会社持分(70%)」という欄が一行追加されています。
また、当期発生額の評価損益は「△200」が正しい表記になると思います。

念のため、期首の評価益を仕訳形式で表示しておくと以下のようになります。上記の表からもわかると思いますが、単体の仕訳でいうところの評価差額金を親会社と子会社で按分するイメージとなります。

また、繰延ヘッジ損益については親会社で発生しているので、親会社のその他有価証券の評価差額金と同様の取扱いとなります。


(6)①~③については表示科目を無視すれば従来作成していたものなので特に問題はないと思います。

一方で④の「株主資本以外の項目の当期変動額の内訳」については、情報の整理の仕方として参考になると思います。ただし、注記まで考えると税効果考慮前および税効果の金額も集計しておく必要があります。

上記の包括利益計算書における「その他有価証券評価差額金」についてですが、当期の変動額となるはずなので連結BSのその他有価証券評価差額金の期首残高と期末残高の差額としたいところですが、残念ながらそのように計算すると間違ってしまいます(期末残高-期首残高=195(益))。
理由は、連結BSのその他有価証券評価差額金は少数株主持分控除後の値であるのに対して、包括利益は少数株主分も含んだ値であるためです。

したがって、包括利益計算書に計上される「その他有価証券評価差額金」は、単純に個社別の評価損益を合計した税効果考慮後の期首残高(1200)と期末残高(1350)の差額150(益)が正しい金額となります。
上記の④の表では「その他有価証券評価差額金」の小計195と、これに関連する少数株主持分△45の合計となります。つまり、少数株主持分に負担させる前の金額に戻して考えるということになります。
なお、設例2では繰延ヘッジ損益が親会社で発生していますが、子会社で生じている場合は、こちらも少数株主持分の影響が発生するので④の表を作成する場合には、有価証券評価差額金に対するものなのか、繰延ヘッジ損益に対するものなのかを区分しておく必要があると考えられます。

包括益の内訳ですが、親会社株主分については、連結PLの当期純利益2,560+連結BSのその他有価証券評価差額金の増加195+連結BSの繰延ヘッジ損益の増加60で2,815となります。これは、連結BSのその他有価証券評価差額金等は少数株主持分を控除した金額で作成されているためです。

少数株主分については、包括利益3,070から親会社分2,815を差し引いた255となるはずですが、この金額は連結株主資本等変動計算書における少数株主持分の「株主資本以外の項目の当期変動額(純額)」の金額と等しくなります。
④の表から内訳を確認すると、子会社の損益にに対する少数株主利益300-有価証券の時価下落に伴う損失の負担45(下落額150×30%)で255となっているといえます。さらに、この△45を分析すると、組替調整額△9と当期発生額△36に分けられるということになります。

最後に設例2で示されている注記等の内容は以下のようになっています。

前提条件から、税効果前の値を集計すると以下のようになり、このような集計を行うことにより上記の注記の金額を集計することができます。

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