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遡及修正の原則的取扱いが実務上不可能な開示例ー平成24年3月期いなげや

平成24年3月期の有価証券報告書で、遡及修正の原則的取扱い(つまり前期の数値を遡及修正すること)が不可能とした事例があったので紹介します。

”いなげや”や平成24年3月期に棚卸資産の評価方法を最終仕入法から売価還元法に変更を行っています。実際の注記内容は以下のようになっています(「会計処理基準に関する事項」の「たな卸資産」の部分に記載)

(会計方針の変更)
 商品及び製品(ドラッグストア事業の商品は除く)の評価方法は、従来、最終仕入原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)によっておりましたが、当連結会計年度より売価還元法による管理システムを組み込んだコンピューターシステムの整備を契機に生鮮食品等(センター商品を含む)以外の商品の評価を売価還元法による原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)に変更しております。これは、たな卸資産の評価を通じて月次損益及び期間損益をより迅速かつ適正に算定するためのものであります。
 この会計方針の変更は、前連結会計年度末よりコンピューターシステムが稼働しているため、当連結会計年度の期首における遡及適用による累積的影響額の算定は可能であるものの、前連結会計年度の期首における累積的影響額を算定することが実務上不可能であるため、売価還元法による原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)に基づく当連結会計年度の期首の商品及び製品の帳簿価額と、前連結会計年度の期末における商品及び製品の帳簿価額の差額をもとに算定した累積的影響額を、当連結会計年度の期首残高に反映しております。
 これにより、従来の方法と比べて、当連結会計年度末における商品及び製品が3億12百万円減少し、当連結会計年度の売上原価が1億9百万円増加しており、その結果、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益がそれぞれ1億9百万円減少し、少数株主損益調整前当期純利益及び当期純利益がそれぞれ64百万円減少しております。
 当連結会計年度の連結キャッシュ・フロー計算書は、税金等調整前当期純利益が1億9百万円減少し、たな卸資産の増減額が1億9百万円増加しております。
 当連結会計年度の1株当たり純資産額、1株当たり当期純利益金額はそれぞれ3円99銭、1円40銭減少しております。 
 当連結会計年度の期首の純資産の帳簿価額に反映された会計方針の変更の累積的影響額により、連結株主資本等変動計算書の利益剰余金の遡及適用後の期首残高は1億20百万円減少しております。

実際には並行稼動していたのではないかと推測されるので「前連結会計年度末よりコンピューターシステムが稼働している」という部分は怪しい感じはしますが、いずれにしても前々期首の影響が不明なので前期の数値を遡及修正はできないということではないかと思います。

最終仕入法から売価還元法への変更の場合は、原則的取扱いが不可能というケースも理解できますが、今度、先入先出法と平均法間の変更で原則的取扱いが実務上不可能というようなケースが出てくるのかが興味のあるところです。先入先出法や平均法を採用している場合、他の評価方法で必要な過去データはそろっていると想定されることからすると、そのような事例がでてくる可能性は低いように思いますが、過去のデータが消滅したというようなケースであれば可能性はなくはなさそうです。

なお、平成24年3月期において、たな卸し資産の評価方法の変更は、上記以外に下記の2件がありました。

①THK-総平均法→個別法へ変更

【会計方針の変更】
1.仕掛品の評価方法の変更
 従来、当社の仕掛品の評価方法は、計画品、受注品ともに総平均法によっておりましたが、受注品について、当連結会計年度より個別法に変更しております。これは原価管理を強化し期間損益をより適正に表示するため新原価計算システムを導入して、原価計算方法を組別総合原価計算からロット別個別原価計算に変更したことによるものであります。当該会計方針の変更は個別原価データの収集を当期首より開始しているため、前連結会計年度末の仕掛品の帳簿価額を当連結会計年度の期首残高として、期首から将来にわたり適用しております。
 これにより、従来の方法によった場合と比較して、当連結会計年度における仕掛品が246百万円減少しており、当連結会計年度の売上原価が同額増加した結果、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益が246百万円減少しております。
 当連結会計年度の1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益金額はそれぞれ、1円91銭減少しております。

②白銅-端材の評価方法の変更

↓記載箇所は、会計処理基準に関する事項の「たな卸資産」の部分に記載

(会計方針の変更)
 当社及び連結子会社の商品の評価方法は、従来、新しい材料(新材)及び切断後に残った材料(端材)を一括管理し同一の用途として使用していたことから、新材と端材を一体として評価する方法を採用していましたが、当連結会計年度より新材と端材を区分管理する方法に変更しております。
 この変更は、端材の有効利用及び新材使用の効率性が当社グループの収益構造への影響を及ぼしてきたことから、新材管理システムの導入等を機に棚卸管理基準を改訂し、新材、端材の在庫重量区分管理を徹底し、商品毎の販売回転期間のモニタリングを行う体制を整備したことによるものであります。当該変更に伴い、端材については、一定の販売回転期間を超過した在庫についてスクラップ市場における売却可能性を考慮して帳簿価格を評価する方法を採用する会計上の見積りの変更を行っており、会計方針の変更とあわせて将来にわたり適用しております。
 この変更により、従来の方法と比べて、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益がそれぞれ325,864千円減少しております。

いまいちよくわかりませんが、端材が新材のごとく評価され過大評価になっていたので評価方法を変更したということではないかと思います。会計上の見積の変更なので、将来に向けて適用しているとのことですが、かなり微妙な感じがします。単に期首たな卸資産が過大だっただけのような気がしてなりませんが・・・

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