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「のれん」の減損はやはり難しい-「のれんの減損及び償却に関する質問票」に対するJICPA回答を読んで

JICPAのRSSを見ていたら、”「のれんの減損及び償却に関する質問票」に対する意見について”というものがありました。
 内容を確認したところ、企業会計基準委員会から公表され、意見募集されていた「のれんの減損及び償却に関する質問票」に対する意見を取りまとめて提出(平成24年10月3日)したというものでした。

質問票に対してJICPAが提出した回答も開示されており、各質問項目と回答は以下のようになっています。質問16の回答が興味深い回答となっています。

<質問1>

取得したのれんについて、20 年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的な償却を行うとともに、「固定資産の減損に係る会計基準」(平成14 年8 月 企業会計審議会)に準拠して減損処理を行う現行の取扱いについて適切と考えますか。

<質問1に対する回答>

はい

のれんの償却については日本基準の独自路線を貫くということのようです。規則的な償却によって過大なのれんを償却して粉飾に利用するという話は、最近話題になったばかりな気がしますが、それでもやはりのれんの減損を検討するよりは、規則的に償却していく方がわかり易くてよいということだと思います。
 IFRSや米国基準の適用企業と比較するとのれんの償却分だけ費用が大きくなってしまいますが、その不利益が大きいと感じる大企業はIFRSの任意適用に踏み切ると推測されますので、外国人株主が少しいるくらいの大半の上場企業については、国際的な基準と相違があっても大きな影響はないのではなかと思います。

<質問5(質問1の回答が「はい」の場合の次の質問)>

のれんについて減損損失の戻入れを行わない取扱いについて、適切と考えますか。

<質問5に対する回答>

はい

<質問16(第2章、第3章及び第5章は回答しないため省略とされています)>

(以下、質問前文一部抜粋)
のれんを含む資産グループから得られるキャッシュ・フローの見積りは、市場で観察されるものでなく主観的であり、監査人が入手できる情報は経営者に比べて相当程度限定されることから、監査人が経営者の主張に異議を唱えることは実務において困難という見解も一部に示されています。また、減損損失が、損失認識の期間を任意に選択することを通じて、利益操作に利用される可能性があるという見解も示されています。

(以下、質問内容)

「固定資産の減損に係る会計基準」に基づくのれんの減損テストには、上述のように、見積りの要素が多く含まれ、客観的な証拠の入手が困難であることから、減損の要否や減損損失額に関する監査は困難と考えますか。

<質問16に対する回答>

はい

質問16に対する回答が「はい」の場合、「困難と考える事項について、具体的に記載して下さい。」とされており、これに対して以下の回答がなされています。

過去のキャッシュ・フロー予測と実際のキャッシュ・フローとの差異の分析や外部証拠などに基づき、経営者の主張が合理性に欠けると判断できる場合に、監査において異議を唱えること自体は可能である。しかし、将来キャッシュ・フローに代表される将来の見積りには、経営者の主観的見積りの要素が多く、明らかに合理性に欠けるとまでは判断しかねるような場合には、この経営者の主観的見積りに異議を唱えることは、監査判断に際し非常に難しい場合が多いと考える。

よくぞ、言ってくれたという気持ち半分、今さら何をという感じ半分というところですが、「明らかに合理性に欠けるとまでは判断しかねるような場合には、この経営者の主観的見積りに異議を唱えることは、監査判断に際し非常に難しい場合が多いと考える。」という部分は、きっと多くの監査人が感じている事ではないかと思います。

<質問17>

質問16 に対する回答が「はい」の場合、減損の判定について、どのような方法によって監査可能性を向上させられるのかについて、以下に見解を記載して下さい。

<質問17に対する回答>

減損テストの監査可能性は、以下のような方法によって向上させられるものと考える。

(1) のれんの取得時における将来キャッシュ・フローの見積り等の前提を取得時に文書化し、計上後の減損の判定は当該前提と実績との比較により行う等の減損の判定に関する企業の内部統制を確立させること。

(2) IAS 第36 号第134 項から第137 項において、のれん又は耐用年数を確定できない無形資産の減損テストに際して要求されているように 、上記根拠及び減損判定のルールとともに、当期の減損判定に用いた前提条件及び判定結果について、財務諸表への注記を求めていることで、一定の監査可能性の向上が図られる。

(3) 将来キャッシュ・フローの見積り(評価技法の選定を含む)及び割引率の算定について、専門家の関与を増加させること。

会社の立場からすると上記は事務処理を増やすだけなので勘弁してもらいたいという感じではないかと思います。
(1)については、よほど安定した経営環境下でもなければ、取得後環境変化に応じて手を加えていくことが予想されるので、現実問題として文書化はかなり難しいのではないかと感じられます。
(2)については、財務諸表に注記されていようがいまいが、のれんの減損を検討する際には確認するはずの項目のような気がするので、これで監査可能性の向上が図られるというのは、現状の監査がどのような水準にあると想定しているのかと聞きたくなります。
(3)については、将来キャッシュ・フローの見積りの専門家とは誰なのかが気になりますが、暗に、会計士は「将来キャッシュ・フローの見積りの専門家」ではないんだと言いたいだけかもしれません。

今後、どのように基準に落とし込まれていくのかに注目です。

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