損害賠償金の税務上の取扱い(その3)-役員や従業員が起こした事故の賠償金
今回は、役員又は従業員が起こした事故の賠償金を会社が負担する場合の税務上の取扱いについてです。とりあえず、損害賠償金の税務上の取扱いシリーズは今回で終了です。
この場合の取扱いについての原則的な取扱いは、法人税基本通達9-7-16で述べられています。(法人が支出した役員等の損害賠償金)
9-7-16 法人の役員又は使用人がした行為等によって他人に与えた損害につき法人がその損害賠償金を支出した場合には、次による。
(1) その損害賠償金の対象となった行為等が法人の業務の遂行に関連するものであり、かつ、故意又は重過失に基づかないものである場合には、その支出した損害賠償金の額は給与以外の損金の額に算入する。
(2) その損害賠償金の対象となった行為等が、法人の業務の遂行に関連するものであるが故意又は重過失に基づくものである場合又は法人の業務の遂行に関連しないものである場合には、その支出した損害賠償金に相当する金額は当該役員又は使用人に対する債権とする。
ポイントは以下の二点です。
①賠償金の原因となった事故が業務の遂行に関連しているか
②事故を起こした役員又は従業員に故意または重過失があったかどうか
1.業務の遂行に関連し、故意又は重過失がなかった場合
この場合、法人の支出した損害賠償金は、給与以外の一時の損金として取り扱うことができます。
ところで、最も可能性が高いと考えられる自動車事故に関連する損賠賠償金の場合、通常は任意保険に加入していることから実質的に法人が支出しなければならない損害外賞金は免責部分を除き発生しないのではないかと考えられます。
そこで、保険金収入と損害賠償金の関係はどうなるのかが問題となります。この点については、法人税基本通達9-7-18において以下のように定められています。
(自動車による人身事故に係る内払の損害賠償金)
9-7-18 自動車による人身事故(死亡又は傷害事故をいう。)に伴い、損害賠償金(9-7-16(2)に係る損害賠償金を除く。)として支出した金額は、示談の成立等による確定前においても、その支出の日の属する事業年度の損金の額に算入することができるものとする。この場合には、当該損金の額に算入した損害賠償金に相当する金額(その人身事故について既に益金の額に算入した保険金がある場合には、その累積額を当該人身事故に係る保険金見積額から控除した残額を限度とする。)の保険金は益金の額に算入する。(昭46年直審(法)20「9」により追加)
(注) 保険金見積額とは、当該法人が自動車損害賠償責任保険契約又は任意保険契約を締結した保険会社に対して保険金の支払を請求しようとする額をいう。