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簡便法で退職給付引当金を計上している会社が制度の一部を確定拠出年金に移行した場合の会計処理

今回は、退職一時金に対する退職給付引当金を簡便法で計上していた会社が、その一部を確定拠出型の制度(以下「DC」という)に移行した場合の会計処理についてです。

いままで意識したことがありませんでしたが、結論としては、基本的な考え方は原則法で処理している会社と同様にDCに移行した部分については退職給付制度の終了として処理することになります。

この点については、退職給付制度間の移行等に関する会計処理(企業会計基準適用指針第1号)の第35項で以下のように記載されています。

簡便法適用企業における退職給付制度の終了の会計処理

35. 簡便法を適用している企業においても、退職給付制度の終了の会計処理は同様に行う(第10項参照)。

(1)退職給付制度の終了の時点で、終了した部分に係る退職給付債務と、その減少分相当額の支払等の額との差額を、損益として認識する。終了した部分に係る退職給付債務は、選択された簡便法(適用指針第50項及び第51項参照)に基づいて計算された終了前の退職給付債務と終了後の退職給付債務との差額として算定する。

(2)会計基準変更時差異の未処理額(適用指針第130項参照)は、終了部分に対応する金額を、終了した時点における退職給付債務の比率その他合理的な方法により算定し、損益として認識する。

(3)上記(1)及び(2)で認識される損益は、退職給付制度の終了という同一の事象に伴って生じたものであるため、原則として、特別損益に純額で表示する。

ちなみに、第35項は「結論の背景」の一部です。「結論の背景」には結構重要なことが書かれていると改めて感じました。それはさておき、上記から退職一時金(確定給付型の退職給付制度)について自己都合退職の場合の期末要支給額に基づいて退職給付引当金を計上している会社が、その制度の一部をDCに移行した場合の処理を整理すると以下のようになります。なお、会計基準変更時差異の未処理額はないものとします。

①終了した部分に係る退職給付債務=従来の退職金規程等に基づいて制度の終了時点で計算した自己都合退職の場合の要支給額-制度変更後の退職金規程等に基づいて計算した自己都合退職の場合の要支給額の差額

②終了する制度の見合いとして事業主がDCへ拠出する金額

制度終了損益=①-②(プラスの場合が利益)

また「退職給付制度の終了の時点」については、改訂された規程や規約の適用が開始される日(施行日)となります(「退職給付制度間の移行等の会計処理に関する実務上の取扱い(実務対応報告第2号)」A1)。これは、退職給付制度の改訂規程等の施行によって事業主と従業員の権利義務は明確に変わることとなるためです。

最後に念のため記載しておくと、DBからDCへの移行にあたり事業主の拠出が未了であっても、事業主からの支払又は現金拠出額が確定している場合には「退職給付制度の終了」に該当するとされている(適用指針第1号第4項)ので、上記のとおり改訂された規程等の施行日に会計処理を行うことになります。

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