株主総会のスケジュール(その1)-会計監査人非設置会社
この位の時期になると、株主総会および会社法決算のスケジュールをどのようにしようかという確認が行われます。
上場している会社であれば、多くの場合、取締役会設置会社・監査役会設置会社・会計監査人設置会社の公開会社となりますが、上場会社の子会社や上場準備会社では状況は様々です。
会社法上は、採用している機関構成等によって、必要とされる決算スケジュールが変わります。これは、基本的に計算書類や事業報告の監査に関連する要請が異なることによります。
上記のように採用している機関の影響を受けるものの、決算スケジュールを気にするような会社であれば、取締役会設置会社で監査役(会)設置会社であることが通常だと思いますので、以下では取締役会・監査役(会)設置会社を前提とします。
1.会計監査人設置会社以外
(1)監査役(会)の監査対象
まず、監査役(会)の監査対象を確認しておくと、監査役会設置会社の場合、原則として、計算書類、事業報告、それらの付属明細書が監査役の監査対象となります(会社法436条1項)。
なお、公開会社(譲渡にあたり会社の承認を有する株式を発行していない会社)でない場合で、かつ監査役会設置会社でない場合は、定款で監査役の監査の範囲を会計に関することを定めることができます(会社法389条1項)。この場合は、事業報告及びその付属明細書は監査役の監査対象とはなりません(会社法389条3項、会社法施行規則108条)。
(2)監査役(会)の監査に要する期間
監査役(会)の監査日程について、会社法上は監査報告の通知期限という形で規定されています。なお、以下に述べる通知期限までに監査報告の内容が通知されない場合は、当該通知すべき日に監査を受けたものとみなされることになっています(会社計算規則124条3項)。
各事業年度の計算書類に関する監査報告期限
計算書類については、以下の①~③のいずれか遅い日までに監査報告の内容を通知しなければならないとされています(会社計算規則124条1項1号)。
①計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日
②計算書類の付属明細書を受領した日から1週間を経過した日
③特定取締役及び特定監査役が合意により定めた日
細かい点は無視すれば、計算書類一式を監査役に提出して4週間と考えておけばよいと思います。
事業報告に関する監査報告期限
事業報告についても計算書類と同様に、以下の①~③のいずれか遅い日までに監査報告の内容を通知しなければならないとされています(会社計算規則132条3項)。
①事業報告を受領した日から4週間を経過した日
②事業報告の付属明細書を受領した日から1週間を経過した日
③特定取締役及び特定監査役が合意により定めた日
こちらも細かい点を除けば、事業報告書を監査役に提出して4週間ということになります。
結局のところ、計算書類と事業報告を同時に監査役に提出するとするならば、提出から最長4週間が監査役監査に必要ということになります。
(3)株主総会の招集通知の発送期限
これは、あえて書くまでもないかもしれませんが、株主総会を招集するには、株主総会の日の2週間前までに招集通知を発送しなければならないとされています(会社法299条1項)。
ただし、公開会社以外の会社で、株主総会に出席しない株主が書面もしくは電磁的方法によって議決権を行使することができると定めていない場合は、総会の日の1週間前までに招集通知を発送しなければならないとされています。
(4)株主総会の開催期限
一般的に株主総会は決算日から3カ月以内に開催しなければならないと言われることが多いように思います。しかしながら、厳密にいうと、会社法上、株主総会を決算日から3カ月以内に開催しなければならないという条文はありません。
会社法上は、296条1項において「定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」とされています。したがって、時期が一定の時期であれば決算日後3ヶ月以内でなくとも構わないということになりますが、一方で、総会において議決権を行使できる株主の確定に基準日を設けた場合には、基準日から3カ月以内に議決権の行使を行わなければならないという制約が存在します(会社法124条2項)。
会計監査人設置会社以外の会社の場合、有価証券報告書の提出期限は関係ないと思いますが、法人税の申告書の提出期限は原則として決算日後2か月以内であり、これは確定した決算に基づく必要があるため、税法上の要請からすれば株主総会を決算日後2カ月以内に開催しないとならないということになります。申告書の提出期限の延長を申請している場合であっても、結局のところ決算日後3カ月以内に総会の開催が必要ということになります。
2.会計監査人設置会社以外のスケジュールまとめ
上記をふまえて会計監査人設置会社以外の3月決算の会社のスケジュール例を示すと以下のようになります。
上記だとなんとなく余裕がありそうですが、税務申告を原則通り2カ月以内に提出しなければならないとすると、株主総会が上記より1カ月繰り上がりますので、4月の3週目には計算書類や事業報告を監査役に提出していないとならないスケジュールとなります。
実際に監査役が監査期間として4週間を要求することは少ないと思いますが、それにしても監査期間として4週間を与えるというのは個人的に期間を与えすぎていると感じます。この4週間のために、監査役から嫌味をいわれる経理担当者も多いのではないでしょうか。
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