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本社移転決定による資産除去債務計上開始の事例

経営財務3111号(2013年4月22日)に”本社移転と資産除去債務”という記事が掲載されていました。

この記事では平成24年3月期以降に本社を移転または移転することを決定した会社の資産除去債務会計基準への対応状況がまとめられていました。

該当する会社は以下の9社です(括弧内は監査人)。

  1. ひまわりホールディングス(アーク)
  2. アジア・アライアンス・ホールディングス(KDA)
  3. デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(あずさ)
  4. ザッパラス(あずさ)
  5. アイティメディア(トーマツ)
  6. スクウェア・エニックスホールディングス(新日本)
  7. ブロードバンドタワー(トーマツ)
  8. エリアクエスト(三優)
  9. ネットプライスドットコム(トーマツ)

上記のうち、最初の4社は前年度まで資産除去債務を計上しておらず、移転決定により新たに資産除去債務を計上した会社です。この4社について実際の開示例を見ていくことにします。

1.ひまわりホールディングス(平成24年3月期)

(資産除去債務関係)
前連結会計年度(平成23年3月31日)

当社グループは、本社事務所の建物賃借契約に基づき、事務所の退去時における原状回復に係る債務を有しておりますが、当該債務に関連する賃借資産の使用期間が明確でなく、将来、移転する予定もないことから、資産除去債務を合理的に見積もることができないため、当該債務に見合う資産除去債務を計上しておりません。

 
当連結会計年度(平成24年3月31日)
(会計上の見積りの変更)

当連結会計年度において、近日中に本社移転を行う見込みのため、本社の不動産賃借契約に伴う原状回復義務として資産除去債務について合理的な見積りが可能となり、見積額の変更を行っております。この変更により、従来の方法に比べて、当連結会計年度の営業損失、経常損失及び税金等調整前当期純損失はそれぞれ39,214千円増加しております。

資産除去債務のうち連結貸借対照表に計上しているもの

(1) 当該資産除去債務の概要
本社事務所の建物賃借契約に基づく事務所の退去時における原状回復義務等
(2) 当該資産除去債務の金額の算定方法
使用見込期間を本社移転予定日までと見積り、資産除去債務の金額を計算しております。
(3) 当該資産除去債務の総額の増減
当連結会計年度において、近日中に本社移転を行う見込みのため、本社の不動産賃借契約に伴う原状回復義務として資産除去債務について、合理的な見積りが可能となり、見積額の変更を行っております。
2013-04-23_1

2.アジア・アライアンスホールディングス(平成24年3月)(平成24年3月期)

(資産除去債務関係)
資産除去債務のうち連結貸借対照表に計上しているもの
イ 当該資産除去債務の概要
当社本店の不動産賃貸借契約に伴う原状回復義務等であります。
 
ロ 当該資産除去債務の金額の算定方法
本社移転が決定し、原状回復義務の費用総額及び履行時期の見積りが可能となったことにより、計上したものであります。
 
ハ 当該資産除去債務の総額の増減
2013-04-23_2

3.デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(平成24年3月)(平成24年3月期)

(資産除去債務関係)
当連結会計年度末(平成24年3月31日)
資産除去債務のうち連結貸借対照表に計上しているもの
1.資産除去債務の概要
当社グループのオフィスに係る不動産賃貸借契約に伴う原状回復義務であります。
2.資産除去債務の金額の算定方法
 使用見込期間を退去予定日までと見積り算定しております。なお、使用見込期間が短く、短期で決済されるため、割引計算は行っておりません。
3.当連結会計年度における資産除去債務の総額の増減
2013-04-23_3
(注1)当社の連結子会社である㈱スパイアの本社移転が決定し、原状回復義務の費用総額及び履行時期の見積りが可能となったことにより、計上したものであります。

4.ザッパラス(平成24年4月)(平成24年3月期)

(資産除去債務関係)
前連結会計年度(平成23年4月30日)
当社グループにおける本社オフィス及び携帯電話販売店舗設備等については、退去時における原状回復義務を有しておりますが、当該債務に関する賃借資産の使用期間が明確でなく、現在のところ移転の予定もないことから、資産除去債務を合理的に見積もることができません。そのため、当該債務に見合う資産除去債務を計上しておりません。
 
当連結会計年度(平成24年4月30日)
平成24年5月25日の取締役会にて本社オフィスを移転することが決定され、当連結会計年度において、本社の不動産賃借契約に伴う原状回復義務として資産除去債務について合理的な見積りが可能となったため、見積額の変更を行っております。なお、これによる当連結会計年度の損益に与える影響はありません。
 
1.当該資産除去債務の概要
 当社グループの本社オフィス等の建物賃借契約に基づく、退去時における原状回復義務につき、資産除去債務を計上しております。
 なお、本社オフィス等の不動産賃貸借契約に基づく資産除去債務については、資産除去債務の負債計上に代えて、不動産賃貸借契約に関する敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当連結会計年度の負担に属する金額を費用に計上する方法によっています。
 
2.当該資産除去債務の金額の算定方法
 使用見込期間を本社オフィスの移転予定日等までと見積り、敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を計算しております。
2013-04-23_4

最後のザッパラスの事例は決算日後に意思決定をしているので、見積可能となったものの「当連結会計年度の損益に与える影響はありません」ということになっています。概念的には見積もられた資産除去債務の大部分が既に発生しているはずなので釈然としない部分はありますが、過年度遡及基準に従えばこうなってしまうので仕方がないというところでしょうか。

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