適切な監査時間と監査報酬ってどれくらい?
2013年4月19日に日本公認会計士協会の会員向けに「適切な監査時間及び監査報酬について」という会長声明が公表されました。
内容は以下のようなものです。
なお、会計士協会は「監査時間又は時間当たりの監査報酬の額について合理的な理由がなく前年度に比し著しく減少している場合」に個別に調査を行っているとされています。
3月決算の会社の新年度の予算編成が完了しているこのタイミングで、このような声明を出されても、どうすればいいの?という感じはしますが、時間当たりの監査報酬が大きく減少している場合に個別調査を協会が行っているというのは知りませんでした(私には関係ありませんが・・・)。
さて、実際の監査報酬が過去どのように推移しているについて、JICPAが3月に公表した「2013年度版 上場企業監査人・監査報酬実態調査報告書」では、以下の調査結果が示されています。
(出典:2013年度版 上場企業監査人・監査報酬実態調査報告書 P5)
この調査結果からすると、確かに微減傾向を示していますが、ルーチン化による作業の効率化で説明がつく範囲ではないかと思います。むしろ、リストラが叫ばれている業界で、大きく値崩れしていないことからすれば、他国の監査報酬の水準との比較はさておき「業務の内容又は価値に基づいた報酬を請求」しているということになるのではないでしょうか。
とすると、上記の会長声明は他意はなく、大きく監査報酬を減少させて監査を受託している監査人対する警告と考えられます。ダンピング的な監査受託をしたら、監査の品質を調査しに行くので、心しておくようにということなのでしょう。あるいはもっと報酬をとれということかもしれませんが・・・
2013年度版 上場企業監査人・監査報酬実態調査報告書によると、企業名は明らかにされていませんが、監査証明業務報酬が前年度比50%以上減少した企業は、以下の15社とされています。
(出典:2013年度版 上場企業監査人・監査報酬実態調査報告書 P13)
15社のうち11社は監査人の交代を伴っています。「大手⇒その他」の場合は業績悪化等により高い監査報酬が払えなくなったためではないかと推測されます。問題は、「大手⇒大手」あるいは「交代なし」で報酬が50%以上減少しているケースです。
仮にこのような報酬減が監査の品質に悪影響を及ぼすと協会が認識しているのであれば、そのような企業名・監査人名を広く開示するのが投資家の保護につながるのではないでしょうか。
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