大会社の株式保有特定会社の判断基準が25%から50%になったというのはどういうことか?
1カ月位前になりますが2013年5月27日に、国税庁は財産評価通達を改正し、大会社の株式保有特定会社の判断基準を25%から50%に引き上げました。
個人的に税務上の株価を計算することはありませんが、知っておいた方がよさそうなので内容を確認しました。
今回の財産評価通達の改正は、株式保有特定会社株式の評価方法を巡って国と納税者で争われた裁判において、国が敗訴(東京高裁平成25年2月28日判決)したことを受けて、行われた改正です。
この裁判では、相続により取得した上場会社並みの非上場会社の株式の評価について争われ、納税者側は、会社の規模などの実態から類似業種比準方式での評価を主張する一方で、国は株式保有特定会社に該当するとしてS1+S2方式で評価する旨を主張していました。
必ずしも類似業種比準方式の方が有利になるわけではありませんが、大きく成長した会社の場合は純資産も大きくなっていますので、類似業種比準方式の評価額の方が有利となることが多いと考えられます。
ちなみに、裁判で争われた会社の場合、類似業種比準方式による評価額は1万9,002円(国側の主張)であるのに対して、S1+S2方式によった場合の評価額は4,653円(納税者側の主張)と、S1+S2方式は類似業種比準方式の4倍以上の評価額となっています。
さらに付け加えておくと、相続開始時の評価会社の総資産は2,100億円(帳簿価額)で、売上高は年1,882億円という規模の会社でした。
そして、取引所の相場がない株式の評価については、原則的には以下の基準で会社の区分を決定し、会社区分に応じて定められた評価方法を適用することになります。
会社区分の判定
①従業員数が100名超の場合は大会社に該当します。
②従業員数が100名未満の場合は、以下の売上高あるいは総資産額・従業員数により判定を行います。売上高基準とは総資産額・従業員数基準のいずれか高い方の区分が採用されます。
例えば卸売業で売上高が100億円であるが総資産が15億円・従業員60名の場合は、売上高基準により大会社となります。
評価方式
会社の区分に応じて、原則として以下の評価方式が適用されます。
株式保有特定会社とは?
原則的な評価方法は上記のとおりで、今回裁判で争われた会社は上記の基準では明らかに大会社に該当しますが、株式保有特定会社に該当する場合には例外的な評価方法が適用されることになっています。
ここで、株式保有特定会社とは、評価会社が所有する株式および出資の価額の合計額(相続税評価額)の総資産(相続税評価額)に占める割合が一定以上の会社を意味します。
そして、従来は 総資産に占める株式等の保有割合が、「大会社」の場合は25%以上、「中会社」「小会社」の場合は、50%以上の会社が株式保有特定会社該当するとされていました。
これが、評価通達の改正により大会社においても50%が基準となりました。結局のところ今後は会社区分に関係なく、株式保有割合が50%以上か否かで株式保有特定会社に該当するかを判断することになります。
S1+S2方式とは?
最後にS1+S2方式について簡単に確認します。文字通りS1とS2の評価額を合計した金額を評価額とするという方式です。
S1とは、発行会社が保有する株式等やその株式等に係る配当金を除外した上で、原則的評価方式(会社規模に応じ類似業種比準価額方式、純資産価額方式またはその併用方式により評価した金額のいずれか)による評価額を意味します。
S2とは、保有株式等を純資産価額方式により評価した価額を意味します。
上記の例からもわかるように、会社の状況等によっては類似業種比準方式を採用した場合に比べてS1+S2の評価額の方が著しく大きくなる可能性があります。今回の改正は、株式保有特定会社に該当する可能性を小さくする方向での改正ですが、株式保有割合が高まると評価額が大きくなる可能性があるという点は少なくとも頭に入れておいた方がよいと考えられます。
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