監査役会非設置会社で複数の監査役がいる場合の監査報告書は1枚?
今回は、監査役会設置会社以外で複数の監査役がいる場合の監査報告書についてです。
監査役会設置会社以外で複数の監査役(例えば常勤1名+非常勤1名)がいる場合、監査役からの監査報告書は連名で1枚になっているのが通常だと思いますが、監査役間で監査意見が異なるような場合に、監査報告書はどのようになるのでしょうか?
監査役会設置会社の場合、監査役会の決議は監査役の過半数の決議をもって行うとされていますので(会社法393条)、意見を異にする監査役がいたとしても1枚の監査報告書が作成されることになっています。
ただし、監査役会監査報告の内容と監査役の監査報告の内容が異なる場合には、議事録に異議を記載したうえで(会社法393条4)、その内容を監査役会監査報告に付記することが出来る(会社法施行規則130条2項)とされており反対意見をすくいあげる手当がされています。
一方で、監査役の監査報告義務を定めた会社法381条1項では「監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。この場合において、監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。」とされているだけであり、会社法施行規則105条4項においても「監査役は、その職務の遂行に当たり、必要に応じ、当該株式会社の他の監査役、当該株式会社の親会社及び子会社の監査役その他これらに相当する者との意思疎通及び情報の交換を図るよう努めなければならない。」と努力義務規定が設けられているだけで、意見の相違があった場合にどうするというような定めはありません。
これらの規定からすると、監査役会設置会社以外で複数の監査役がいる場合、意見が一致していようがいまいが、各監査役がそれぞれ監査報告書を作成するのが原則となるといえます。
では、なぜ通常は監査報告書が連名で作成されているのか?
これは、複数監査役間で監査意見が一致しているのであれば監査報告書を1枚にまとめてよいといわれている(中小会社の監査役業務とQ&A 重泉 良徳著)からということのようです。
また、日本監査役協会が公表している「監査報告のひな形について」(平成23年3月10日最終改訂)では以下のように記載されています。
監査役会が設置されない会社の場合には、各監査役が監査報告を作成することに変わりないが、株主に対して提供される監査報告については、各監査役の監査報告を提供する方法に代えて、各監査役の監査報告をとりまとめた一つの監査報告を作成し、これを提供することも可能である。本ひな型はこの形を示している。
「監査報告のひな形について」の説明からすると、仮に意見が異なっていたとしても1枚の監査報告書にまとめることも可能と読めますが、監査役会の監査報告書と異なり意見の付記というような法的根拠が曖昧ですので、意見が一致していないのであれば原則どおり各監査役が監査報告書を作成するというのが無難ではないかと考えられます。
最後に、監査役会設置会社で監査役の意見が付された監査報告書の事例を探してみたところ、随分前の事例ですが平成20年3月期の昭和ゴム(現:昭和ホールディングス)の監査役会の監査報告書がありました。
こんな感じで記載されるのですね。
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