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借地権と資産除去債務計上の要否(その1)

今回は借地権と資産除去債務についてです。

借地権のうち定期借地権については資産除去債務の適用指針の設例にも登場しているので資産除去債務の対象となりうるというのはわかりますが、定期借地権なら契約に書いてなくても原状回復義務を法律上負うものなのか、あるいは定期借地権以外の借地権はどうなるのかについては理解があいまいだったので確認してみることにしました。

借地権を確認する上で、まず重要なのはその借地権がいつ設定されたものなのかです。なぜなら、借地借家法が施行された平成4年8月1日より前に存在していた借地権なのか、借地借家法施行後に設定された借地権なのかによって適用される根拠法令が異なるためです。

定期借地権については、借地借家法により導入されており導入後約20年しか経過していないため、借地上の賃貸不動産を中古で取得したような場合には、その借地権は旧法によるものであるというケースもありえます。

そこで、各種借地権について適用法令、存続期間、更新の有無などをまとめてみると、以下のようになっています。
shakutiken

1.民法の原則

借地法(旧法)にしても借地借家法(現行法)にしても、民法の特別法なので民法上の原則をまず確認しておくと、民法では、賃貸借契約終了時に賃借人は目的物返還義務と原状回復義務を負うとされてています(民法597条1項、598条、616条)。

ただし、上記の条文をみても一般人には理解しにくい内容となっています。
すなわち、民法598条では「借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる。」とされています。

この条文からすれば、「できる」なので、しなくてもよいのでは?と考えてしまいますが、一方で民法597条1項では「借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない」と借主は借用物の返還義務を負っているので、趣旨からすれば借主は原状回復・収去義務も負担すると解すべきとのことです。

なお616条は賃貸借の場合にも597条1項、598条を準用する旨の規定です。

というわけで、繰り返しになりますが、民法上、借主は原状回復義務を負うということになります。

2.借地法(旧法)による借地権

次に平成4年7月31日以前に契約開始している旧法による借地権について確認します。借地法(旧法)は大正10年に制定され、借地借家法の施行により廃止されていますが、借地借家法施行以前の借地契約については引き続き適用されています。

旧法上、特に借主の原状回復義務は規定されていません。したがって、一般原則の民法に立ち返ると借主は契約終了時に原状回復義務を負うことになります。

しかしながら、旧法上、借主は建物が存在する限り借地権の更新を請求することが可能で、貸主も正当な理由がなければこれを拒否することができません(借地法4条1項)。仮に、貸主が正当な理由によって借地権の更新を拒否する場合には、借主が貸主に対して建物の買取を請求することができるとされています(借地法4条2項)。

このような状況からすると、旧法の借地権において借主が民法の一般原則に基づいて原状回復義務を履行しなければならないケースはまれだと考えられます。問題となるとすれば、借主の希望によって借地権を契約期間中に解除するようなケースが考えられますが、普通は自らすすんで契約期間中に契約を解除することは考えられませんので、資産除去債務の計上の要否という観点からすると、そのようなレアケースを考慮する必要はなく対象外と考えることができそうです。

では、旧法の借地権契約書において、建物買取請求権を排除し原状回復義務を定めているような場合にはどうなるのかが問題となります。結論からすれば、旧法での建物買取請求権は強行規定であったためこのような特約は無効となるとのことです。

したがって、旧法の借地権であれば契約書上、原状回復義務が規定されていたとしても、原状回復義務を履行する状況は基本的に想定されないので、原則として資産除去債務を計上する必要はないと考えられます。

長くなりましたので、その他の借地権については次回とします。

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