消費税転嫁対策-どこまでOKでどこからアウト?
今回は消費税が予定通りにアップした場合に消費税転嫁対策特別措置法(以下「転嫁対策法」)で、何がOKで何がアウトなのかという点についてです。
消費税転嫁対策法に関しては、7月に消費者庁からガイドライン案が公表(意見募集締め切りは8月23日)されており、このガイドラインが参考になります。
1.「価格据え置き」表示の可否
まず最初に、消費税が8%になった後に「価格据え置き」という表示は問題ないかについてですが、結論としては単に「価格据え置き」と表示するだけであれば転嫁対策法違反とはなりません。
消費者庁の「消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方(案)」によれば、「宣伝や広告の表示全体からみて消費税を意味することが客観的に明らかな場合」が転嫁対策法に違反する表示となるとされています。したがって、単に「価格据え置き」という表示だけであれば転嫁対策法違反とはならないといえます。
ここで販売者としては、広告宣伝的に「価格据え置き」とするよりも、「消費税アップ後も価格据え置き!」というような表示を行いたいと考えるのが自然ですが、このような表示はどうなるのかが問題となります。
ガイドライン案では禁止される具体的な表示例等として以下のものが例示されています。
(1) 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示(第1号)
ア 「消費税は転嫁しません。」
イ 「消費税は一部の商品にしか転嫁していません。」
ウ 「消費税を転嫁していないので、価格が安くなっています。」
エ 「消費税はいただきません。」
オ 「消費税は当店が負担しています。」
カ 「消費税はおまけします。」
キ 「消費税はサービス。」
ク 「消費税還元」、「消費税還元セール」
ケ 「当店は消費税増税分を据え置いています。」(2) 取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの(第2号)
ア 「消費税率上昇分値引きします。」
イ 「消費税8%分還元セール」
ウ 「増税分は勉強させていただきます。」
エ 「消費税率の引上げ分をレジにて値引きします。」(3) 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって第2号に掲げる表示に準ずるものとして内閣府令で定めるもの(第3号)
ア 「消費税相当分、次回の購入に利用できるポイントを付与します。」
イ 「消費税相当分の商品券を提供します。」
ウ 「消費税相当分のお好きな商品1つを提供します。」
エ 「消費税増税分を後でキャッシュバックします。」
「消費税アップ後も価格据え置き!」という表現であれば、禁止される例として挙げられている「当店は消費税増税分を据え置いています。」のように消費税増税分を明示しているわけではないので、絶対にアウトという表示ではないと考えられますが、一般的な国語力をもっている人からすれば消費税分を据え置いていると解釈するのが普通なので、できれば避けたほうが無難といえます。
2.「3%値引きセールの可否」
次に「3%値下げ」や「3%還元」セールの実施の可否についてですが、結論からするとこれは現状の案では問題ないとされています。
つまり、たまたま消費税率の引上げ幅と一致するだけなので、「3%値下げ」や「3%還元」セールは問題ないという整理です。もちろん、消費税増税分との関連したものでないという建前ですから、「消費税分3%値下げ」とか「消費税3%還元」というような表示はアウトです。
「たまたま」微妙な「3%値下げ」をするのか!と突っ込みたくなりますが、これが明確にOKとされているのであれば、「3%値下げ」や「3%還元」を使用するのが広告宣伝的には無難なのではないかと思います。
3.事業者間取引における消費税負担表示の可否
転嫁対策法で禁止されている表示に関しては、小売業が最終消費者に対して販売する場合が例として取り上げられることが多いのですが、事業者間取引で「消費税分は当社が負担します」というような表示をカタログなどに入れることができるのでしょうか?
答えは「認められない」です。転嫁対策法8条1号では「取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示」とされており、2号および3号においても同様に「取引の相手方に」という表現が用いられています。
つまり「取引の相手方」であれば、相手が事業者であろうと最終消費者であろうと、転嫁対策法における表示規制をうけることになります。
本当に意味があるのかよくわかりませんが、転嫁対策法違反で問題とされないためにも、表示方法も今後の検討が必要です。
日々成長