消費税転嫁対策法による転嫁拒否とは(その1)?
「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(いわゆる消費税転嫁対策法)では以下の四つの特別措置が公示されていますが、表示(以下の②および③)に目がいって、「消費税の転嫁の拒否等の行為の是正に関する特別措置」について理解が曖昧だったので今回確認してみることにしました。
①消費税の転嫁拒否等の行為の是正に関する特別措置
②消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置
③価格の表示に関する特別措置
④消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為に関する特別措置
ちなみに、消費税転嫁対策法は平成25年10月1日より施行されています。
1.規制対象者
消費税の転嫁を拒否するというこのなので、この規制の対象者は買手側になりますが、すべての買手がこの法律の規制対象となっているわけでわありません。
(出典:「消費税転嫁対策特別措置法について(詳細版)」(公正取引委員会))
大規模小売事業者は対策もきっちりしていると思うのですが、問題は「特定供給事業者から継続して商品又は役務の供給を受ける法人事業者」も規制対象となっているという点です。そして、特定供給事業者には「資本金等の額が3億円以下の事業者」と「個人事業者等」が含まれているので、ほとんどの会社では消費税転嫁対策法の規制対象となる取引を抱えているということになりそうです。
2.違反したらどうなる?
後ろ向きですが消費税転嫁対策法に違反したらどうなるのかですが、この点については公正取引委員会が9月に公表した「消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法、独占禁止法及び下請法上の考え方」の「7 違反行為に対する措置」で「公正取引委員会、主務大臣及び中小企業庁長官は、消費税転嫁対策特別措置法第4条の規定に基づき、特定事業者に対して必要な指導等をする」と述べられています。
具体的な指導内容としては以下が掲げられています。
①転嫁を拒否した消費税額分を支払うこと
②遡及的に消費税率引上げ分を対価に反映させること
③転嫁と引換えに購入させた商品を引き取り、商品の代金を返還すること
④役務の利用料又は提供を受けた利益を返還すること
⑤消費税を含まない価格で価格交渉を行うこと
⑥指導に基づいて採った措置を特定供給事業者に周知すること
⑦違反行為の再発防止のための研修を行うなど社内体制の整備のために必要な措置を講じるとともに、その内容を自社の役員及び従業員に周知徹底すること
⑧今後、転嫁拒否等の行為を繰り返さないこと
あくまで「指導」という位置づけではありますが、このような指導を無視して消費税の転嫁を拒否することは現実的ではないと考えられますので、結果的には転嫁を拒否した消費税額分を支払うことことになると考えられます。
3.禁止される行為は?
転嫁対策法で禁止される行為としては以下の5つがあげられています。
- 減額(第3条1号前段)
- 買いたたき(第3条1号後段)
- 商品購入、役務利用又は利益提供の要請(第3条2号)
- 本体価格での交渉の拒否(第3条3号)
- 報復行為(第3条4号)
各項目の詳細は次回に譲りますが、上記2の「買いたたき」が実務上はやっかいな部分ではないかと思います。買い手側として正当な価格交渉(値下げ要求)をしているつもりでも、売手側が「買いたたき」だとして、いらぬトラブルに発展する可能性もあります。したがって、この点はよくよく注意しておく必要がありそうです。
続きは次回以降とします。
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