短期前払費用の特例採用会社が消費税差額を翌期に支払った場合の処理は?
税務通信3287号の税務の動向に”消費税の税率差3%相当額を支払った場合 短期前払費用適用後の追加支払いは対価の返還で処理”という記事が掲載されていました。
平成26年4月1日以降の期間を含む取引については、とりあえず5%で請求し、施行日後差額の3%分を請求するという告知を行っている事業者も少なからず見かけます。上記の記事では、短期前払費用の特例で損金算入済みの会社が、追加で3%の消費税相当額を翌期に支払った側の処理はどうなるのかという点が整理されていました。
この記事で取り上げられていた方法は以下の二つです。
- 「支払対価の返還」による処理
- 「仮払消費税」として処理
(前提)
賃貸期間:平成26年1月1日~平成26年12月31日(1年間)
賃料:年間120万円(消費税別)
賃料の支払日:平成25年12月末に126万円(120万円+5%で計算した消費税6万円)を前払
賃料の処理:短期前払費用の特例を適用し、支払時に全額を損金算入済み
消費税の取扱い:平成26年4月1日以降の期間分は、施行日後消費税3%相当分を別途請求する
その他:3月決算の会社とする
上記の場合、支払側では支払った事業年度に全額損金算入され、対応する仕入税額控除がとられていることになります。一方で、貸主からは4月~12月の賃料相当額90万円(120万円×9か月/12カ月)の3%相当額である27,000円が翌事業年度に請求されてきます。
「支払対価の返還」による処理
「支払対価の返還」による処理では、以下のような処理になると解説されています。
(追加支払時)
借)仮払金 27,000 貸)現金預金 27,000
(決算時)
借)賃借料 900,000 貸)賃借料 900,000
仮払消費税 72,000 仮払消費税 45,000
(8%) (5%)
仮払金 27,000
つまり決算時には、前事業年度において5%の税率で仕入税額控除を行った8%の税率適用分を仕入対価の返還を受けたものとして処理したうえで、税率差3%相当額を含めて改めて8%の税率を適用して仕入税額控除を計算するという方法です。
「仮払消費税」として処理
(追加支払時)
借)仮払消費税 27,000 貸)現金預金 27,000
「支払対価の返還」による処理とくらべるとこちらの方がシンプルで処理も簡単なようですが、残念ならがらそう単純な話ではないようです。
というのは、「税率差3%相当額“のみ”を「仮払消費税等」として処理し、仕入税額控除の計算をする方法は適正な処理として認められないものと考えられる」とされているためです。
このように考えられるのは、消費税率の引上げに伴い“地方消費税の税率”の改正も行われており、改正前後で国税分と地方税分の割合が異なるためです。
つまり上記の消費税差額27,000円を改正後の税率で国税と地方税に区分すると国税分21,262円(27,000×6.3/8)、地方税分5,737円となります。
一方で「支払対価の返還」として処理した場合、新たに計上した72,000円のうち国税分は56,700円(72,000×6.3/8)、地方税分は15,300円(72,000×1.7/8)となり、一方で支払対価の返還として処理した45,000円のうち国税分は36,000円(45,000×4/5)、地方税分は9,000円((45,000×1/5)となります。このように計算するとネットで国税分は20,700円(56,700円-36,000円)、地方税分は15,300円-9,000円=6,300円となります。
結局のところ・・・
どちらの方法で処理しても端数の誤差を無視すれば支払金額は変わりませんが、上記のとおり国税と地方税の内訳は比較的大きな差が生じます。税務通信の記事では、仮払消費税として処理するとしても、仕入税額控除の計算にあたっては適正な控除額となるように調整が必要と考えられるとされています。
そうであるならばむしろ事務処理は煩雑になると考えられますし、消費税額を事後的にチェックするという点からしても「支払対価の返還」として処理しておいたほうが、税コードなどを利用して確認も行いやすいと考えらえるので「支払対価の返還」として処理するのが無難という事になりそうです。
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