有償減資を行った場合の為替換算調整勘定の処理
在外子会社が存在する場合、連結財務諸表上、為替換算調整勘定が発生します。この為替換算調整勘定が生じている在外子会社が有償減資をおこなった場合に、為替換算調整勘定部分ははどう会計処理するかが今回のテーマです。
要は、為替換算調整勘定部分を為替差損益が実現したものとして損益として計上すべきなのか、損益として認識すべきではないのかです。この点について会計基準上は、在外子会社が有償減資を行った場合の会計処理については特に明記されていません。
調べてみると、「為替換算調整勘定の会計実務」(新日本有限責任監査法人)において「有償減資を行った場合の為替換算調整勘定の処理」という項目が取り上げられていました。
同書では、有償減資時の為替換算調整勘定の処理としては以下の二つの処理が考えられるとされています。
- 取得原価に含まれる含み損益を為替差損益として純損益に計上する方法
- 入金額(円貨額)を出資の払戻しとして取得原価から減額し、取得原価に含まれる為替の含み損益を純損益を実現させない方法
そして、外貨建取引等会計処理基準の改訂に関する意見書(平成11年10月22日企業会計審議会)三8において「為替換算調整勘定は子会社等の株式を処分したときなどに限り損益として実現するものである」とされていることから、「有償減資がこの処分とみなされるかが問題となる」としています。
上記1.は有償減資を会社清算や株式売却と同様に株式の処分と考えるもので、「有償減資により為替の含み損益を実現させる考え方であり、個別財務諸表で為替差損益が計上され、連結上も消去されずに残る」ことになります。
他方、上記2.は当該有償減資には株式処分の実態がないと考えるもので、「投資が継続しているものとみて、為替換算調整勘定に計上されている為替の含み損益は実現していないとする考え方であり、個別財務諸表及び連結財務諸表の双方で為替差損益は計上されない」ことになります。
どちらの考え方によるかで、会計処理が全く異なりますが、最終的は「個々の実際に応じた会計処理を選択する必要がある」とされています。
これは、「子会社が行う有償減資は、業績不振子会社の活動縮小を前提とした有償減資等、実態として投資の清算に近い場合」は、上記の1.の考え方に従って純損益として認識するのが妥当と考えられる一方で、「子会社の場合には親会社の判断で有償減資が可能なケースも多く」、常に1.の考え方によると「実態は変わらずに為替の含み損益を任意に実現させることにが可能になる」ためと説明されています。
結局のところケースバイケースで考えるしかないということのようです。
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