最高裁判例を参考に事業場外みなし労働制の適用範囲を再確認-阪急トラベルサポート事件
労基法38条の2第1項に定められているいわゆる「事業上外みなし労働時間制」の適用の有無を巡って争われた裁判で、はじめての最高裁判決になりそうだと注目を集めていた阪急トラベルサポート事件の判決が2014年1月24日に下されました。
ビジネスガイドの2014年5月号にこの件について弁護士の平野剛氏(第一共同法律事務所)が書いた特集記事が組まれていたので、この記事をベースに内容を確認することとします。
阪急トラベルサポート事件は、企画募集型の旅行の添乗員の労働時間について事業上外みなし労働時間制の適用の可否について、国内旅行の添乗員に関する第1事件(東京高判平23.9.14労判1036.14)、海外旅行の添乗員に関する第2事件、国内旅行と海外旅行の双方の添乗員に関する第3事件(東京高判平24.3.7労判1048.26)という三つの事件が争われ、今回最高裁で判決が下されたのは海外旅行の添乗員に関する第2事件についてです。
なお、「第1事件と第3事件についても事業上外みなし労働時間制の適用を否定した各東京高裁判決が確定した模様」とのことです。
この第2事件を巡っては、1審では事業上外みなし労働時間制の適用が認められましたが、2審では一転みなし労働時間制の適用が認められないという判決が下されていました。
そして、
以下、上記の記事で取り上げられていた点のポイントを確認していきます。
事案の概要
こう書くとずいぶん管理されている感じがしますが、1審では添乗業務が
から、事業上外みなし労働時間制の適用を肯定しました。
2審および最高裁の判断
一方で2審では、「補充的に自己申告たる性質を有する添乗日報を用いて添乗業務に関する労働時間を把握するについて、その正確性と公正性を担保することが社会通念上困難と認められないのであれば」、労働時間をを算定し難いときにはあたらないという判断を下しました。
今回の事案とは関係ないですが、残業時間の自己申告制は否定されるような風潮を最近感じていますが、上記の2審の判断からすると、自己申告が必ずしも否定されるものではないと改めて感じました。
最高裁では、「業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等」、「業務に関する指示および報告の方法やその実施の態様、状況等」について以下のような判断を下しました。
業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等
業務に関する指示および報告の方法やその実施の態様、状況等
上記を要約すれば、日程表で工程が管理され、その工程を大きく変更するような裁量は添乗員に与えられていなかったことから各日の業務について具体的に指示されていたのと同様であることに加えて、詳細な業務日報によって労働時間が把握できるのであれば「労働時間を算定しがたい」とは言えないというところでしょうか。
営業職に事業上外のみなし労働時間制を適用している会社は、上記のような点を踏まえて、もう一度「労働時間を算定し難い」といえるのかを検討してみる必要がありそうです。
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