特別加入者の給付基礎日額の拡大-平成25年9月より
労災保険は本来労働者でなければ加入できませんが、労災保険には特別加入という制度があります。
特別加入制度とは、労働者以外の者であるものの、業務の実態や災害発生状況などからして、労働者に準じて保護することが適当と認められる人に、労災保険への任意加入を認めるというものです。
現状、労災の特別加入が認められるのは以下の三種類に限られています。
(1)中小事業主等
(2)一人親方その他の自営業者
(3)海外派遣者
(1)の中小事業主等というのは一定の規模要件以下の中小企業の経営者等が労災に任意加入できるというものです。これは中小企業の経営者は、経営者といっても労働者と同じように働いていることも多いので労働者として業務災害等にあったのであれば保護される道を開くものとなっています。
(2)の一人親方というのは、労働者を使用しないで事業を行っている大工さんや個人タクシーの運転手を意味します。これらの方たちは、職種からしても労働災害に遭遇する可能性が高く、保護することが適当と考えらえれているため特別加入が認められています。
最後に(3)の海外派遣者は、典型的には海外子会社に在籍出向する労働者が該当します。この場合、出向先の指揮命令系統に従って労働することになるため、特別加入しないと出向元の労働者として労災の適用を受けることができません。
労災の特別加入の面白いところは、選択肢として用意されている労災保険の水準(給付基礎日額)の中から加入水準を自由に選択することができるところです。通常の労災であれば、労働者の賃金をベースに給付水準が決定され、本来は給料が月30万円だけれども、労災を50万円で加入するということはできません。しかし、特別加入制度の場合は、実際の収入に関係なく加入水準を選択することができます。
さて、この給付基礎日額ですが、従来は3500円~2万円までの13段階の選択肢でしたが、平成25年9月1日から、2万2000円、2万4000円、2万5000円の3段階が追加され16段階になっています。
特別加入という制度自体は頭に残っていたのですが、給付基礎日額の上限が引き上げられていたというのはフォローできていませんでした。
従来は、海外派遣者の特別加入などの場合、上限が2万円であったため実際の給与水準を下回る水準でしか加入できないということがあったようですが、上限が2万5000円になると随分異なります。
給付基礎日額2万円であれば年730万円ですが、2万5000円だと912万5000円となります。
一方で、保険料は給付基礎日額が2万円の場合で2万9200円に対して、給付基礎日額が2万5000円の場合は3万6500円です。年間の保険料差約1万円で約25%の給付基礎日額がアップするのでこれは検討の価値があります。
なお、現在特別加入中の場合は、平成26年度の労働保険の年度更新期間に手続きを行うことで給付基礎日額を引き上げることができます。
日々成長