役員賞与引当金と税効果
今回は役員賞与引当金と税効果についてです。
役員賞与については、「役員賞与に関する会計基準」(企業会計基準第4号)の13項において「当事業年度の職務に係る役員賞与を期末後に開催される株主総会の決議事項とする場合には、当該支給は株主総会の決議が前提となるので、当該決議事項とする額又はその見込額(当事業年度の職務に係る額に限るものとする。)を、原則として、引当金に計上する。」とされています。
これに従い会計上、役員賞与引当金が計上されることがあります。一方で、法人税法上は引当金繰入額は損金算入が認められず、申告加算することになります。
一方で、「税効果会計に係る会計基準」では原則として資産負債法が採用されています。資産負債法とは「会計上の資産又は負債の金額と税務上の資産又は負債の金額との間に差異があり、会計上の資産又は負債が将来回収又は決済されるなどにより当該差異が解消されるときに、税金を減額又は増額させる効果がある場合に、当該差異(一時差異)の発生年度にそれに対する繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する方法」(個別税効果実務指針33項)です。
したがって、資産負債法の立場から原則的に考えると会計上の負債計上額と税務上の負債金額に差が生じていますので税効果の対象となるということになります。一方で、役員賞与については実際に支給されたとしても税務上通常は損金不算入となるので将来税金の負担を軽減する効果を有していないことになります。
したがって、一時差異として繰延税金資産と同額の評価制引当金が計上されると考えるのか、あるいは、そもそも税効果の対象ではないと考えるのかが問題となります。
この点、個別税効果実務指針14項では、「税務上の交際費の損金算入限度超過額、損金不算入の罰科金、受取配当金の益金不算入額のように、税引前当期純利益の計算において、費用又は収益として計上されるが、課税所得の計算上は、永久に損金又は益金に算入されない項目がある。これらの項目は、将来、課税所得の計算上で加算又は減算させる効果をもたないため一時差異等には該当せず、税効果会計の対象とはならない。」とされており、さらに「税効果会計に関するQ&A」のQ2では以下のように述べられています。
Q2: 個別税効果実務指針の第8項では一時差異の例示がありますが、役員賞与に係る引当金とストック・オプションに係る費用は、どのように取り扱うことになりますか。
(1) 役員賞与に係る引当金
役員賞与は、発生した会計期間の費用として処理されることとされ、当事業年度の職務に係る役員賞与を期末後に開催される株主総会の決議事項とする場合には、当該支給は株主総会の決議が前提となるので、当該決議事項とする額又はその見込額(当事業年度の職務に係る額に限る。)は、原則として、引当金に計上することとされています(企業会計基準委員会企業会計基準第4号「役員賞与に関する会計基準」第3項、第13項)。
税務上、役員給与のうち損金に算入される額は、一定の要件を満たしたものに限られていますので(法人税法第34条から第36条)、会計上、費用処理された役員賞与のうち将来にわたって損金算入されないものは、将来減算一時差異に該当しないので、税効果会計の対象とはなりません。
というわけで、会計と税務の負債金額の相違はあっても、役員賞与引当金は税効果会計の対象とはならないということになります。
したがって、税効果の注記(繰延税金資産及び繰延税金負債の発生の主な原因別の内訳)に役員賞与引当金がのっていることはまれであると考えられますが、開示例を確認してみるといくつか開示例が確認できました。
これらの会社の役員賞与は利益連動給与等に該当し支給時に損金算入できるタイプのものであるということのようです。
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