見積計上した費用は法人税法上加算すべきか(最終回)
会計上見積計上した費用を法人税の申告上加算すべきかについての最終回です。
前回までの結論は、見積額の妥当性に自信があるのであれば会計上の見積額であっても法人税法上加算しなくてもよいのではないかというものでした。
そこで、実際に見積計上した費用を法人税の申告上加算している会社がどれくらいあるのかを調べてみることにします。調べ方としては、上場会社の有価証券報告書に記載される繰延税金資産負債の内訳(税効果の注記)において、「未払金」等が一時差異の項目として掲げられている会社がどれくらいあるのかを確認してみることにします。
2013年3月31日を決算日とする有価証券報告書提出会社の連結損益計算書において「売上」で検索すると2,102社がヒットし、税効果の注記において「未払金」が含まれる会社を検索すると380社がヒットしました。
「未払金」でヒットしたものの中には「役員退職慰労未払金」や「賞与未払金」が含まれているので、純粋に見積計上したため加算していると考えらえる「未払金」は上記の件数よりは少なくなりますが、一方で、独立掲記されておらず「その他」に含まれているものも当然あるはずですので、少なめに見積もって、約3割の会社では加算している「未払金」があると考えてよいのではないかと思います。
ちなみに、同様に「未払費用」で検索してみると301社がヒットします。
次に、単体の税効果の注記で「未払金」を検索すると441社、「未払費用」で検索すると293社がヒットします。こちらも検索結果に「役員退職慰労未払金」等が含まれるのは同様ですが、ヒット数は連結注記の検索結果よりも多くなっています。これは、連結財務諸表を作成していない会社があることに加えて、連結ベースでは他の項目が大きくなるため独立掲記されないものが単体財務諸表の注記では独立掲記されていることや、連結上相殺される性質のものであることなどが推測されます。
(ちなみに、単体の損益計算書で「売上」で検索すると2,308社がヒットしました。)
例えば2013年3月期の荏原製作所の繰延税金資産負債の内訳は以下のようになっています。
会社の規模が大きくなればなるほど、重要性が乏しいと考えられる金額は大きくなるため、たとえ会計監査を受けているとしても、会社の規模に比して金額的重要性が乏しければそれほど精緻な見積もりといえなくとも許容されると考えられます。
例えば税前利益が200億円ある会社で、±500万円程度の誤差が見込まれる見積が一つあったとしても会計上は大きな問題にはならないのではないかと考えられます。
しかしながら、取るか取られるかの世界ともいえる税務の観点からすると、いくら会社の規模が大きいといっても絶対的な金額がそこそこ大きければ問題視される可能性は否定できません。
というわけで、見積計上した金額を法人税の申告上加算するかどうかは、やはり見積計上した金額がどれだけ合理的と考えられるか次第ではないかというのが現状の結論です。
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