従業員持株会(その2)-従業員持株会の形態
従業員持株会(その2)として、従業員持株会の形態についてです。
1.法的性格
従業員持株会が設立される場合、その法的な性格としては以下の三つの形態があります。
- 民法661条1項の規定に基づく組合
- 権利能力なき社団
- 任意団体
上記のとおり三つの形態が存在するものの、ほとんどの会社の従業員持株会は民法上の組合として設立されているのが現状です。そして、この民法上の組合として設立される方式は証券会社方式と呼ばれています。また、3の任意団体として設立方式は信託銀行方式と呼ばれています。
ほとんどの会社で民法上の組合が採用されるのは、運用面でのコストと税務上のメリットによるものです。各形態における税務上の取り扱いを要約すると以下のようになります。
民法上の組合 | 権利能力なき社団 | 任意団体 | |
---|---|---|---|
法的性格 | 民法667条の規定に基づく団体。法人格なし。 | 社団として認められるものの法人格なし | 法人格なし |
税務上の取り扱い | 法人税の課税なし。 会員個人が受ける配当金は配当所得となる。配当控除利用可。 | 法人税が課税される。 会員個人が受ける配当金は雑所得 | 法人税の課税なし。 会員個人が受ける配当金は配当所得となる。配当控除利用可。 |
信託銀行方式は、持株会の理事長が会員の代理人として信託銀行との間で契約を締結して信託を設定し、信託銀行が信託された会員からの拠出金をもとに株式の買い付けを行うという仕組みなので、この方式が採用されているのかどうかはわかりやすいと思います。
一方で、民法上の組合として設立されたものなのか、法人格のない社団として設立されたものなのかはどう区別されるのかが疑問として生じます(法人税が課税されるのかどうかが変わってきます)。
そこで、まず民法667条の内容について確認しておくと以下のように規定されています。
第六百六十七条 組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。
2 出資は、労務をその目的とすることができる。
上記の規定から、「各当事者が出資をして共同の事業を営むこと」を契約すれば民法上の組合として設立可能ということになります。具体的には、従業員持株会の規約に会の性格として「民法667条第1項に基づく組合とする」旨を記載しておき、持株会設立契約書において規約に従って株式への共同投資事業を行うことを契約する旨を記載することによって、民法上の組合として設立するということになります。
また、従業員が持株会に入会する際の入会申込書にも、規約を承認の上、入会を申し込むと明記されているのが一般的なようです。
2.全員参加方式(間接投資型)と少数会員方式(直接投資型)
次に、従業員持株会と持株会への参加者との関係でみると、以下の二つの方式があります。
- 全員参加方式(間接投資型)
- 少数会員方式(直接投資型)
どちらの方式であっても、実質的には両者に大きな差はありません。
1.全員参加方式(間接投資型)
参加者全員が民法上の組合員となって、参加者の拠出金、会社の奨励金、再投資の配当金を出資金とする方法。
この方式の特徴をまとめると以下のようになります。
2.少数会員方式(直接投資型)
総数のメンバーが民法上の組合員となって、一般の参加者は民法上の組合員とならず、出資を労務出資(金銭出資をすることもある)によって行う方法。
この方式の特徴をまとめると以下のようになります。
上記のように、持株会に拠出された時点での金銭の取り扱いが異なるものの、実質的には差がないと考えられます。
今回はここまでとします。
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