財産保全会社設立のメリットは?
オーナー系の会社が上場準備をする場合、財産保全会社が設立されることが多くあります。
例えば、明日ジャスダックに上場予定の(株)鳥貴族のIの部の「株主の状況」では以下のように開示されています。
第2位の株主である「株式会社大倉忠」は役員等により議決権の過半数を所有されている会社とされていますので、オーナーの財産保全会社として設立されたものと推測されます。
財産保全会社を設立するメリットは?
一言でいえば、相続税対策です。つまり、財産保全会社を設立しておくと、将来の相続税の節税が可能となる可能性が高いということです。
以下、どうしてそうなるのかについてです。
株式上場を考えている会社のオーナーは、自分の保有している株式の一部を財産保全会社に現物出資するか譲渡するかします。あえて書くまでもないかもしれませんが、これによりオーナーは上場を予定する会社の株式と財産保全会社の株式を保有することになります。
そして、株式上場後に相続が生じた場合、相続人は上場会社の株式と財産保全会社の株式を相続することになります。
上場株式の相続税評価額
上場株式の場合、相続税評価額は、課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)の終値、その月、前月及び前々月の終値の平均値のうち最も低い価格となります。
上記のうち最も低い価格となるとしても、非上場時と比較すれば株式上場によって、相続税評価額は著しく高いものとなる可能性が高いといえます。
財産保全会社株式の相続税評価額
財産保全会社の株式は、取引相場のない株式となりますが、さらに一般的には「株式保有特定会社」に該当します。
「株式保有特定会社」とは、課税時期(又は直前期末)においてその会社が有する株式及び出資の額の総資産価額に占める割合(いずれも相続税評価額で計算)が50%以上である会社を意味します(財基通189(2)。
したがって、財産保全会社が上場株式の保有を目的とするのであれば、一般的に財産保全会社は「株式保有特定会社」に該当することになるといえます。
そして、「株式保有特定会社」の株式は、原則として純資産価額方式に評価されることとなります。
これにより結果的に、財産保全会社に株式を移動した時点から相続時までの評価額の増加分に対する法人税相当分(40%)の節税が可能となるわけです。
また、後継者に財産保全会社を設立させ、オーナーは財産保全会社に貸付を行い、後継者に株式を取得させるということも考えられます。貸付金であれば、上場しても評価額が増加するということもありませんので、後継者への株式の移転と相続税対策を同時に行うことができるとも考えられます。
なお、この財産保全会社を使用した節税については、段々と規制が強化されてきているという経緯があるようですし、相続税そのものも課税範囲が拡大されていることを鑑みると、将来同様の節税効果が得られないこともあるという可能性は考えておいた方がよいのではないかと思います。
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