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従業員持株会(その3)-退会時の買取価格は?

上場会社における従業員持株会の場合、市場価格が存在しますし、敢えて持株会で買い取らなくても単元株に達している部分についてはそのまま株式を引き出しても特に問題は生じません(そもそも流通しているものなので)。

一方で、非上場会社の場合は、株式に譲渡制限が設けられているのが一般的で、広く流通することが前提とされていないため、従業員持株会を退会する人がいる場合は、当該従業員の保有持分を持株会で買い取るなどの対応が必要となります。

この退会時の買取価格ですが、持株会の規約において一定額(取得原価など)に固定されていることが多く、または配当還元価額とされていることもあります。

従業員持株会に長期間参加していたような場合、会社がある程度成長していると1株当たり純資産価額は取得時に比べて格段に大きくなっていることがあります。そのようなケースでは、買取価額が取得原価や配当還元価額で算出されてしまうと、持株会に参加していた期間に積み上げられた留保利益部分を享受できず買取価格が不合理に感じられます。

そもそも、従業員持株会の規約において、買取価格を固定額にするような取り決めをすることは有効なのかが問題となります

この点については、従業員と持株会との間において、従業員が持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が取得価格(この裁判では額面額)で買い戻す旨の合意を有効とする最高裁判例が存在します(最判平成21・2・17 日経新聞従業員持株制度事件)。

つまり、買取価格を固定額にするような取り決めをすることは有効ということです。上記の判例における主な肯定理由は以下の通りです(新しい持株会設立・運営の実務 西村あさひ法律事務所 著)。

  1. 株式譲渡のルールは、従業員持株会制度を維持することを前提に、譲渡制限に服する株式を持株会を通じて円滑に現役の従業員等に承継させるため、株主が個人的理由により当該株式を売却する必要が生じたときなどには持株会が取得価額(額面額)でこれを買い戻すとしたものであって、その内容に合理性がないとはいえない。
  2. 当該会社は非公開会社であるから、もともと当該株式には市場性がなく、取得時も買取時も額面額とするものであるので、持株会を通じて株式を取得しようとする者としては、損失を被るおそれもない反面、およそ将来の譲渡益を期待しうる状況にもなかった。
  3. 株式譲渡のルールの内容を認識したうえで、自由意志により持株会の譲渡ルールに合意したうえで持株会に参加しており、持株会の参加者が持株会に参加することを事実上強制されていたというような事情はうかがわれない。
  4. 当該会社が、多額の利益を計上しながら特段の事情もないのに一切の配当を行うことなくすべて会社内部に留保していたというような事情も見当たらない。

簡単にまとめるとするならば、従業員持株会の規約に合意して、任意に持株会に参加している以上、退会時の買取価格についても規約が優先されるということになるといえそうです。

なお、上記の4番目の理由からすると、仮に多額の利益を計上しているにもかかわらず配当を行っていないようなケースにおいては結論が変わる可能性がありますので注意が必要です。この他、奨励金の支給率も無視できない要因だと考えられます。

日々成長

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