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代表取締役の親族が代表を務める税理士法人との税務顧問契約等の閲覧謄写を求める訴えで企業側が一部敗訴

T&A Master No.562に「企業側への会計帳簿等の閲覧謄写を命じる」という記事が掲載されていました。

帳簿閲覧権というと数年前の楽天 VS TBSが思いだされますが、この記事で紹介されていたののは、東証一部の上場企業で株式の3%超を保有する株主から当該会社に対して、総勘定元帳および会計伝票とそれらの作成材料となった契約書、覚書、領収書等の閲覧謄写を請求したという事件です。

株主がこのような請求することとなったのは、当該会社の代表取締役の親族が代表者である税理士法人との顧問契約を締結しており、当該顧問料が業務内容に対して不相応に高額である可能性があるため、この点を調査する必要があると判断したためとのことです。

会社は株主の請求に応じなかったため、裁判に発展し、その結果東京地裁は、総勘定元帳と会計伝票についてのみ閲覧謄写を認め、契約書当は閲覧謄写の範囲に含まれないという判決を下しました。

なお、会社は会社法433条1項所定の「請求の理由を明らかにして」閲覧請求されたものでないと主張しましたが、裁判所は、株主の請求理由について、具体的に特定の行為について違法または不当である疑いがある旨を指摘するもので、閲覧謄写の必要を基礎づけるものであるという判断しています。

東証一部の会社というだけで、会社名は明らかにされていませんので、当該取引が関連当事者取引と開示されていることを発端として株主からの請求を受けたのか、あるいは、株主が上記の取引を何らかの理由で把握してこのような請求がなされることになったのかは明らかではありません。

上記の判決は平成26年7月22日に下されていますが、適時開示情報を検索してもそれらしきものは発見できませんでした。関連当事者取引に開示されている前提で検索したところ、税理士法人でひっかかったのはTKCだけでした。

平成25年9月期のTKCの有価証券報告書では以下のような開示がなされています。
2014-09-16_1

ただし、上記は「顧問料」ではないようなので、今回取り上げられていた会社は別の会社だと考えられます。

仮に、関連当事者取引に注記されていないとすると、そもそも関連当事者取引としてきちんと把握されていたのだろうかという点も問題となります。もっとも、金額基準でひっかからないということも考えられるので、開示されていないから即誤りということにはなりませんが、今後なんらかの問題に発展する可能性もないとはいえません。

このような株主からの請求で、関連当事者取引があったことを初めて知るようなことがあると、内部統制上も問題となるはずですので、今後の適時開示などを注意してみていきたいと思います。

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