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従業員に対して緊急連絡用に親族等の連絡先の提供を求めることはできるか?

個人情報保護法が全面施行され約10年が経過し、個人情報に対する個人の意識も高まってきていると思いますが、会社と従業員との間でも個人情報の取り扱いが問題となるケースがあります。

今回は、従業員に対して緊急時の連絡先として従業員の親族等の連絡先を提出することを義務付けることができるかについてです。

採用時に身元保証書を入手していればこのようなことが問題となるケースは少ないと思いますが、身元保証書を入手していない場合、会社としては緊急事態が生じた場合に必要な連絡が取れるように単身従業員の緊急連絡先を把握しておくということには合理的な理由も必要性もあります。

富士重工業事件((最高裁昭和52年12月13日第三小法廷判決)では、「労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによって、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負うが、企業の一般的な支配に服するものということはできない」とされています。

「企業の一般的な支配に服するものということはできない」ということから、会社は従業員に対していかなる情報でも要求することができるというものではありません。

しかしながら一方で、労働者は労働契約に付随して「企業秩序遵守義務その他の義務を負う」ともされています。緊急時の連絡先の提供は「企業秩序遵守義務」そのものといえるかは微妙なところですが、緊急時に従業員の親族等に連絡をとることは、企業秩序の維持に資する面はあると考えられますので、「その他の義務」に含まれると考えられます。

上記のとおり、会社が従業員に対して緊急連絡先の提出を求める理由に合理性も必要性もありますので、従業員に対して必要な理由を説明して親族等の緊急連絡先の提供を求めることは可能だと考えられます。

とはいえ、会社は無理やり情報を入手することはできませんので、何らかの理由により従業員がそのような緊急連絡先の提供を拒否する場合には、結局連絡先を入手することはできないということになります。

そのような場合、会社としては、緊急時の連絡目的で依頼した親族等の連絡先を従業員の意思で提供を拒否した旨、および緊急時に緊急連絡を受けられないことに合意している旨の合意書をもらっておくことがよいと考えられます。

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