再びストップ安のエナリスの開示から感じるIRの重要性
エナリスが本日、再びストップ安で上場以来の最安値で取引を終えました。
先日のストップ安はテクノ・ラボ社に対する巨額売掛金が怪しいというようなWEB上の記事に端を発しているとされていますが、本日のストップ安は同社を大口取引先としている石山ゲートウェイホールディングス(株)に粉飾決算疑惑があるとして証券取引等監視委員会が調査に乗り出したという報道に関連したもののようです。
この件に対して、エナリスは「石山ゲートウェイホールディングス(株)の報道について」というリリースを公表しています。
先日のストップ安の際に公表された会社のリリースを読んだ時も感じたことですが、本当に知りたいことは書いていないといというのが率直な感想です。
短いリリースですが、石山ゲートウェイホールディングス(株)の粉飾疑惑に対して「当社は一切関係はございません。」は当然として、そのあとが中途半端です。
「なお、当社と石山ゲートウェイホールディングス(株)との取引は、同社の子会社(当時の社名:株式会社SPC)に対して、発電所建設の当社請負契約の実績1件のみであり、当該工事代金の未払いに対する債権回収を目的とし、同社の不動産を現在、仮差押え済みです。」
上記を好意的に解釈すれば、取引実績1件だけで重要性が乏しく、売掛金も既に不動産を仮差押えしているので回収できそうだということになります。
会社としては先日の報道も風説の流布にあたるようなレベルの報道だという立場をとっているので、上記のような開示でも市場は重要性が乏しく債権も回収可能だと好意的に解釈してくれるだろうと考えているのかもしれません。
しかしながら、前回話題となったテクノ・ラボ社への売掛金が10億円であったことからすると、1件だけといっても売掛金の金額が多額なのではないか、と読み手が疑念を抱くのは自然ではないかと思います。
取引の発生時期は明らかにされていませんが、石山ゲートウェイホールディングス(株)の2014年6月期の連結BSの売掛金は4.2億ですので、6月末までに取引が行われていたとすれば、10億円というような問題にはならないと考えられます。ただし、これも7月以降に取引が行われているのであれば金額がそれよりも多額である可能性がないわけではありません(これも、いついつの取引1件のみと記載されていれば済む話です)。
仮に取引発生時期が6月末までだとしても、債権が回収不能となった場合のインパクトという観点から、問題となっている債権が1000万円なのか1億円なのかで、読み手が抱く印象は全く異なるのではないでしょうか?
また、「債権回収を目的とし、同社の不動産を現在、仮差押え済みです」とありますが、読み手が知りたいのは、それで全額回収できるの?という点だと思います。
これも疑って読めば、仮差押えはしたけれど、それより優先順位の高い抵当権者がたくさんいて回収できない部分があるかもしれないということになります。
同社の置かれている状況を考えれば、かゆいところに手が届かないリリースを続けると「株主の皆様の大切な財産を保護する」ことはできないのではないでしょうか。
リリース内容で印象が大きくちがうだろうなと、IRの重要性を改めて感じた一件でした。
日々成長