改正会社法(その5)-監査等委員会設置会社詳細(その4)
”改正会社法(その4)-監査等委員会設置会社詳細(その3)”の続きです。改正会社法で導入された監査等委員会設置会社の積み残しを確認します。
8.取締役会の権限
改正会社法399条の13第1項において監査等委員会設置会社の取締役会の権限は以下のように定められています。
(監査等委員会設置会社の取締役会の権限)
第三百九十九条の十三監査等委員会設置会社の取締役会は、第三百六十二条の規定にかかわらず、次に掲げる職務を行う。
一 次に掲げる事項その他監査等委員会設置会社の業務執行の決定
イ 経営の基本方針
ロ 監査等委員会の職務の執行のため必要なものとして法務省令で定める事項
ハ 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
ちなみに改正会社法362条(4項6号が一部改正されています)では以下のように定められています。
(取締役会の権限等)
第三百六十二条 取締役会は、すべての取締役で組織する。
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。
監査等委員設置会社以外の取締役会の権限と比較すると、以下の二点で大きな相違があります。
- 経営の基本方針を取締役会で決議しなければならない
- 大会社に限らず、いわゆる内部統制システムを決定しなければならない
また、取締役会が上記362条4項に掲げる事項を取締役に委任することができないのは監査等委員会設置会社においても同様です(改正会社法399条の13第4項)。
しかしながら一方で、監査等委員会設置会社の全取締役の過半数が社外取締役である場合には、一定の事項を除き、監査等委員会の決議により重要な業務執行の決定を取締役に委任することができるとされています(改正会社法399条の13第5項、例外事項は同項1号~17号)。
さらに、改正会社法399条の13第5項1号~17号で定めれている事項を除き、取締役会の決議によって重要な業務執行の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる旨を定款で定めることができるとされています(改正会社法399条の13第6項)。
9.利益相反取引の推定規定の例外
改正会社法では、取締役(監査等委員である取締役を除く)との利益相反取引について、監査等委員会の承認を受けた場合には、取締役の任務懈怠の推定規定が適用されないこととされています(改正会社法423条4項)。
現行会社法では、利益相反取引によって会社に損害が生じた場合、利益相反関係にある取締役、利益相反取引の決定をした取締役、利益相反取引の取締役会の決議に賛成した取締役は任務を怠ったものと推定されますが、この規定が適用されないこととなります。
過半数が社外取締役で構成される監査等委員会の監督機能に着目してこのような例外規定が認められたとのことです。そうすると、利益相反取引を承認した監査等委員会の取締役には任務懈怠の推定規定があってもよさそうですが、そのような規定は見当たりません。
非上場会社であえて監査等委員会設置会社を選択することはないかもしれませんが、改正会社法施行後、IPOを目指すような会社では、どうせ社外取締役を選任するのであれば監査等委員会設置会社にしてしまおうという会社もでてくるかもしれません。
日々成長