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所得拡大促進税制の確認(その3)-雇用者給与等支給額(各論)

今回は、”所得拡大促進税制の確認(その2)-用語の意義”の続きで、雇用者給与等支給増加額の各論について確認します。

前回、用語の意義で確認したとおり、雇用者給与等支給増加額は以下のように計算される金額です。

雇用者給与等支給増加額=雇用者給与等支給額-基準雇用者給与等支給額

6.雇用者給与等支給額(各論)

雇用者給与等支給額は、国内雇用者に対して支給する俸給、給料、賃金、歳費および賞与並びにこれらの性質を有する給与の額で、当該事業年度において損金算入される金額のことをいいます。ただし、その給与等に充てるため他の者(当該法人との間に連結完全支配関係がある他の連結法人を含む。)から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除する必要があります(措法42の12の4②三)。

(1)国内雇用者
 国内雇用者は、法人の使用人のうち当該法人の有する国内の事業所に勤務する雇用者をいうとされています(措法42の12の4②一)。ただし、該法人の役員の特殊関係者や使用人兼務役員は上記の「使用人」から除かれるというのは前回述べたとおりです。

そして、具体的には、当該法人の国内に所在する事業所につき作成された労働基準法108条に規定する賃金台帳に記載された者とされています(措令27の12の4②)。

労働基準法108条では以下のように規定されています。

(賃金台帳)
第百八条  使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

労働者名簿(労基法107条)と異なり、適用が除外される者は定められていませんので、基本的にはパートタイマーやアルバイトはもちろん、日雇労働者についても国内雇用者に該当するはずですが、仮に賃金台帳に記載されていない場合には、国内雇用者には該当しないということになります。

(2)給与等
給与等は、「所得税法第二十八条第一項 に規定する給与等をいう。」(措法42の12の4②二)とされています。

したがって、給与、賃金、賞与などが含まれるのはもちろんのこと、給与所得として取り扱われている現物給与も「給与等」に含まれることになります。

一方で、退職所得となる退職金や給与所得とされない非課税通勤手当は原則として「給与等」に含まれません。

ただし、非課税通勤手当については、措通42の12の4-1の2で以下のように述べられています。

(給与等の範囲)
42の12の4-1の2 措置法第42条の12の4第2項第2号の給与等とは、所得税法第28条第1項に規定する給与等(以下「給与等」という。)をいうのであるが、例えば、労働基準法第108条に規定する賃金台帳に記載された支給額(措置法第42条の12の4第2項第1号の国内雇用者において所得税法上課税されない通勤手当等の額を含む。)のみを対象として同項第3号から第5号までの「国内雇用者に対する給与等の支給額」を計算するなど、合理的な方法により継続して国内雇用者に対する給与等の支給額を計算している場合には、これを認める。(平26年課法2-6「八」により追加)

つまり、非課税通勤手当も支給額に含めてよい場合があるということですが、上記の取扱は、「通勤手当が基本給と一緒に給与明細に総支給額として記載されているところも多く、賃金台帳から集計する際に非課税通勤手当を除いて計算するのが実務上煩雑であることことら設けられた措置」(税務広報2014年11月号 「雇用者給与等支給増加額の計算」藤田益浩)とのことですので、給与システム上、非課税通勤手当が独立した項目として存在し、金額の把握が容易に行えるような場合には、非課税通勤手当を「給与等」に含めるのは難しいのだと思います。

(3)当事業年度の損金に算入される額
◎年度末に棚卸資産等として資産計上されているものに含まれる「給与等」はどうなるのか?

この点について、措通42の12の4-4では以下のように述べられています。

(資産の取得価額に算入された給与等)
42の12の4-4 措置法第42条の12の4第2項第3号から第5号までの「国内雇用者に対する給与等の支給額」は、当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されるものが対象になるのであるが、例えば、自己の製造等に係る棚卸資産の取得価額に算入された給与等の額や自己の製作に係るソフトウエアの取得価額に算入された給与等の額について、法人が継続してその給与等を支給した日の属する事業年度の国内雇用者に対する給与等の支給額に含めることとしている場合には、その計算を認める。(平26年課法2-6「八」により追加)

あくまで、上記の取扱は例外で、原則はその事業年度に損金算入された「給与等」の額ではありますが、資産計上された棚卸資産等の中に含まれる「給与等」の金額を把握し調整するというのは現実的ではないと思いますので、実務上は資産計上されているものに含まれる「給与等」は忘れてよいのではないかと思います

◎20日締め月末払というような場合
20日締め月末払いというような給与の支給形態を採用している場合、21日~月末分を未払計上し、法人税法上損金算入している場合には、当該税制の「給与等」に含まれる一方で、給与システムには反映されていないのが通常なので、この部分については金額の集計時に注意する必要があります(前期と当期の双方を給与システム上の数値に加味する必要がある。)

◎出向者の取扱
出向者については、以下のように取り扱うことになります(措通42の12の4-2)。

出向元法人
出向者への給与の支払額については、賃金台帳へ記載している場合、「国内雇用者に対する給与等の支給額」に含まれる。

出向先から出向者の給与負担金を受け取っている場合には、当該受け取った金額は「他の者から支払を受けた金額」として「国内雇用者に対する給与等の支給額」から控除する必要がある。

出向先法人
出向元ではなく出向者に直接給与を支払っている場合はもちろん(賃金台帳に記載が前提)、給与負担金として出向元に支払っている場合であっても、「当該出向先法人の国内に所在する事業所につき作成された労働基準法第108条に規定する賃金台帳に当該出向者を記載しているとき」は当該給与負担金は「国内雇用者に対する給与等の支給額」に含まれる。

◎決算賞与
決算賞与を未払計上した場合、それが損金算入可能なものであれば、未払計上を行った事業年度の雇用者給与等支給額に含まれることになります。

したがって、あと少しで税額控除の要件を満たせるというような場合には決算賞与を支給することを検討する余地はあります。

長くなったので、基準雇用者給与等支給額については次回以降とします。

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コメント

    • Krone
    • 2014年 11月 07日

    いつも拝見しております。貴重な情報を有難うございます
    さて、所得拡大税制の措通42の12の4-1の2につきまして見解をお聞かせください

    3月決算会社で、3月末に費用計上(残業代を翌月払い、3月に計上した帰宅旅費分を4月払いなど)したもので翌月以降に支払うものはPL計上額(つまり損金算入額)と賃金台帳に差異がでます。千人を超える従業員の調整はかなり煩雑であり、弊社では賃金台帳をベースにこの税制を適用しようとしています。

    これは措通42の12の4-1の2の記載にある合理的な方法にあたると思われますか?

    賃金台帳とPLとに差異がある会社はたくさんあると思うのですが、会社の税務担当の皆様は、相当な労力をかけ調整されるのでしょうか
    現状、弊社ではとてもできそうになく、ご相談した次第です
    宜しくお願い致します

      • MAK
      • 2014年 11月 11日

      Kroneさん

      こんにちは。

      措通42の12の4-1の2は、本来給与所得に含まれないものを集計上除外するのが困難な場合には除外してもよいという趣旨だと思いますので、
      この通達を根拠に3月末の費用計上分を調整しないというのは厳しいように思います。

      3月末に会計上未払計上する金額に給与所得となる部分と経費の立替の精算となる部分があると推測されますが、勘定科目や補助科目を工夫して
      調整すべき金額を把握しやすくしておくというようの方法では対応できませんでしょうか。

      私も理解が不十分なので的外れなことを言っているかもしれませんので、まずは顧問税理士さんに確認されてみるのがよいのではないかと思います。

    • Krone
    • 2014年 11月 13日

    MAK さん
    有難うございます

    顧問税理士とは年内に一度打合せする予定です

    損金計上額を使うのか賃金台帳の金額を使うのかが迷っているところです

    未払計上が有る限り発生する賃金台帳とPLとの差異については、どちらにせよその理由を明確にしないといけないというところでしょうか
    もう少し時間をかけて調べてみます

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