コーポレートガバナンスコードとは?-(その2)
今回は、前回に引き続きコーポレートガバナンスコードの内容の確認です。
前回確認したとおり、コーポレートガバナンスコードには五つの基本原則が存在します。そしてこの五つの原則に対して、原則1-1・原則1-2というようは細分化された原則が存在し、さらに補充原則なるものが設けられています。
基本原則1
上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株主がその権利を適切に行使することできる環境の整備を行うべきである。
また、上場会社は株主の実質的な平等性を確保すべきである。
少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じすい面があることから、十分配慮を行うべきである。
実務上影響が大きそうな項目をピックアップすると、まず、この基本原則に対する【原則1-4.いわゆる政策保有株式】では以下のように述べられています。
上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準を策定・開示すべきである。
有価証券報告書の特性株式投資の保有目的には「安定的取引関係の維持」というような開示がなされていることが多いと思いますが、敢えて「具体的な説明」を行うべきとされている以上、これ以上のレベルでの説明が必要となると考えられます。
また、この基本原則に対する補充原則のうち気になったのは以下の二つです。
上場会社は、株主が総議案の十分な検討期間を確保することできるよう、招集通知に記載する情報の正確性を担保しつつその早期発送に努めるべきであり、また、招集通知に記載する情報は、株主総会の招集に係る取締役会決議から招集通知を発送するまでの間に、TDnetや自社のウェブサイトにより電子的に公表すべきである。
株主の立場からすると期間の確保は望ましいのはもちろんですが、会社としても、今後開示項目がさらに充実し紙ベースの招集通知が厚くなってくるとさらに発送コストも増加する可能性があると見込まれるので、発送前の電子開示というだけでなく、参考書類はウェブで開示するということが主流になっていくのではないかという気がします。
上場会社は、自社の株主における機関投資家や海外投資家の比率等も踏まえ、議決権の電子行使を可能とするための環境作り(議決権電子行使プラットフォームの利用等)や招集通知の英訳を進めるべきである。
これも株主の立場からすると当然の要請だと思いますが、議決権電子行使プラットフォームの参加率は東証1部全体で約25%にとどまっています。なお、招集通知の英訳については、一般社団法人戦略的グローバル協会の調査によれば東証一部企業の23%(2013年度)とされています(短信は47%)。
コーポレートガバナンスコードに織り込まれたことで、これらの比率が今後どの程度変化していくのかに注目したいと思います。
基本原則2
上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。
取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。
この基本原則については、【原則2-2 会社の行動準則の策定・実践】が設けられています。
原則の引用は割愛しますが、会社の価値観を示した行動準則(倫理基準、行動規範)を策定し、取締役会は、それをグループ全体末端まで浸透させる責務を負うべきという内容となっています。
次に【原則2-4 女性の活躍促進を含む社内の多様性確保】という原則が設けられています。具体的には以下のようになっています。
「女性の活躍促進を含む」が無理やりねじ込まれている感じがして、個人的にはなんとなく違和感を感じる文章です。「多様性」という単語のイメージが男性と女性という大雑把な区分にマッチしていないと感じるからかもしれません。
最後に、原則2-5では内部通報制度の整備が取り上げられていますが、上場企業であれば内部通報制度については概ね導入されているのではないかと思います。
長くなりましたので今回はここまでとします。
日々成長