「会計基準の選択に関する基本的な考え方」平成27年3月決算会社事例
以前”「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載事例が登場”というエントリで、改正された決算短信で記載が求められることとなった「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の先行事例を紹介しました。
現時点において公表されている3月決算会社の事例も増えてきたので、改めてどんなことが書かれているのかを確認してみることとします。
その前に、プロネクサスの短信作成要領では「参考事例」としてプロネクサスが考案した記載例がいくつか記載されていますが、宝印刷の短信記載例では記載例は全く記載されていません。
宝印刷の金商法セミナーによると、これは東証との打ち合わせの中で「ひな形」となるような記載例は記載しないでもらいたいという要請があったためということです。そのセミナーで担当者が言っていたのは、ここはあくまで「考え方」を記載するのであって、その会計基準を選択する理由を記載する必要はないとのことでした。
これを踏まえていくつか事例を確認してみます。IFRSの任意適用を決定しているあるいは検討している会社の場合は記載で悩むことはないでしょうから、日本基準を継続適用する会社の事例をピックアップします。
事例としては、理由を書いているケースが多く、日本基準を継続適用する場合にIFRSについても言及しているケースと、IFRSについて言及していないケースは双方見受けられます。
理由について記載していない事例としては、中部電力や中国電力があります。
最後の三井造船の事例は、他に類似例は見当たりませんでしたが、うまいと思ったので取り上げました。日本基準もIFRSと同等評価を受けているという建前からすれば、IFRSを適用する必要性は乏しいというのはもっともですね。とはいえ、同社ではIFRS導入時の影響度分析等を実施しているわけですが・・・
1.株式会社 東京エネシス(2015年4月28日公表)
当社グループの利害関係者の多くは、国内の株主、債権者、取引先等であり、海外からの資金調達の必要性が乏しいため、会計基準につきましては日本基準を適用しております。
2.株式会社 弘電社(2015年4月28日公表)
当社グループは、国内の同業他社との比較可能性を確保するため、会計基準につきましては日本基準を適用しております。
3.株式会社 オリエンタルランド(2015年4月28日公表)
当社グループは、国際的な事業展開や資金調達を行っておりませんので、日本基準に基づき連結財務諸表を作成しております。
4.ヤスハラケミカル株式会社(2015年4月28日公表)
当社は連結財務諸表を作成していないため、国際会計基準に基づく財務諸表を作成するための体制整備の負担等を考慮し、日本基準に基づき財務諸表を作成しております。
5.武蔵工業株式会社(2015年4月28日公表)
当社グループは、連結財務諸表の期間比較可能性及び企業間の比較可能性を考慮し、当面は、日本基準で連結財務諸表を作成する方針であります。
なお、国際財務報告基準(IFRS)適用時期等につきましては、国内外の諸情勢を考慮の上、適切に対応していく方針であります。
6.株式会社コメリ
当社グループは、現在、日本国内において事業を展開していることなどから、当面は日本基準に基づいて連結財務諸表を作成する方針であります。
なお、国際財務報告基準(IFRS)の適用につきましては、今後の事業展開や国内外の動向などを踏まえた上で検討を進めていく方針であります。
7.中部電力株式会社(2015年4月28日公表)
当社グループの主たる事業は電気事業であり,当社の連結財務諸表は「連結財務諸表の用語,様式及び作成方法に関する規則」(昭和 51 年 10 月 30 日 大蔵省令第 28 号)に準拠し「電気事業会計規則」(昭和 40 年 6 月 15 日 通商産業省令第 57 号)に準じて作成しております。
従って,国際財務報告基準(IFRS)について,具体的な適用予定時期は未定でありますが,我が国における適用動向を注視しております。
8.中国電力株式会社(2015年4月28日公表)
当社グループは日本基準を適用しております。国際会計基準(IFRS)の適用については未定です。
9.日立マクセル株式会社(2015年4月28日公表)
将来のIFRSの適用に備え、社内のマニュアルや指針等の整備及びその適用について検討していきます。
10.三井造船株式会社
日本の会計基準は、国際的な会計基準とのコンバージェンスを積み重ね、高品質かつ国際的に遜色ないものとなっており、欧州より国際会計基準と同等であるとの評価を受けていることから、当社グループは日本基準で連結財務諸表を作成する方針であります。
なお、当社グループは将来における国際会計基準の適用に備え、国際会計基準の知識の習得、導入に伴う影響度分析等の取り組みを実施しておりますが、国際会計基準の適用時期は未定であります。
日立マクセルの事例は、現時点において何もしていなくても使用できる文言ではありますが、毎期同じ事を記載するわけにもいかないように思いますのでIFRS適用を考えていないと使用しにくい事例だと思います。
最後に株式会社ヤマト(2015年4月28日公表)、株式会社エスティック(2015年4月28日公表)、積水化学工業株式会社(2015年4月28日公表)では、会計基準選択の考え方が記載されていないようです。
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