有価証券報告書作成の留意点(平成27年3月期)-その2
前回の続きです。
4.退職給付債務の期首残高と期末残高の調整表
退職給付会計基準の改正により退職給付債務の期首残高が変動している場合には、「退職給付債務の期首残高と期末残高の調整表」において「退職給付債務の期首残高」の次に「会計方針の変更による累積的影響額」を設け「会計方針の変更を反映した期首残高」を記載する必要があります。
開示例を示すと以下のようになります。
上記のように三段書きにせずに、調整後の期首残高を記載し、その旨を脚注する方法でもよいようですが、三段書きが多数派だと思います。
5.ハイライト情報の自己資本利益率の算定
退職給付から話がそれますが、退職給付会計基準の改正に伴い期首剰余金の調整を行った場合、ハイライト情報に記載が求められる自己資本利益率はどのように計算するのかが問題となります。
自己資本利益率は以下の計算式で計算されます。
自己資本利益率=当期純利益金額÷{(期首自己資本+期末自己資本)÷2}×100
退職給付会計基準の改正による影響額は期首剰余金で調整するとされていることおよび、「前期末自己資本」ではなく「期首自己資本」となっていることからすると、上記の「期首自己資本」は退職給付会計基準の改正の影響を反映した期首残高で計算することになると考えられます。
6.退職給付に係る調整額の注記
まずは、コカコーラウエストの事例で該当部分を示すと以下のようになっています。なお、名称が紛らわしいので「退職給付に係る調整累計額」も合わせてピックアップしておきます。
「退職給付に係る調整額」の注記は原則として今期から追加して記載する必要があるものです。包括利益計算書に関連する項目ですので、包括利益計算書の注記との整合性に注意する必要があります。コカコーラウエストの包括利益計算書の注記は以下のようになっています。
7.適用指針の改正による表示方法の変更
平成27年3月26日に適用指針が改正されたことにより、複数事業主制度を採用している場合、従来「年金財政計算上の給付債務の額」という項目で注記されていたものを「年金財政計算上の数理債務の額と最低準備金の額との合計額」という項目で注記することが必要とされました。
複数事業主制度を採用していない会社には関係ありませんが、該当事項がある場合には、前年度の表示科目も「年金財政計算上の数理債務の額と最低準備金の額との合計額」に組み替えて表示する必要があります。
退職給付会計基準の改正に関連する部分はこのくらいとします。
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