東京都の法定実効税率の計算に用いる超過税率は改正前、それとも改正後?
平成27年度税制改正が3月31日に公布されたことを受けて、4月1日に東京都都税条例が公布されたという件は前回記載しましたが、改正前後で以下のように超過税率が変動しているので、法定実効税率はどう計算すべきか判断に迷うところです。
第 307 回 企業会計基準委員会議事の「② 事業税率(標準税率)の取扱い」では、「各地方団体の改正条例が平成 27 年 3 月 31 日までに公布されない場合、これまでの実務を踏まえると、平成 27 年 3 月末決算における法定実効税率は、地方税法等改正後の事業税率(標準税率)を算定の基礎とすることになると考えられる。」とされているので、標準税率については改正後を用いるということで問題なありません。
判断に迷うのは「③ 事業税率(超過税率)の取扱い 」です。ここでは以下のように述べられています。
「 ②のケースにおいて、地方税法等改正後の標準税率に基づく超過税率に関する地方団体の改正条例が公布されていないことにより、超過税率が標準税率を超える差分が決定されていない場合、これまでの実務を踏まえると、決算日現在の地方団体の条例に基づく超過税率が標準税率を超える差分を考慮して、法定実効税率の算定に用いる超過税率を算定することになると考えられる。 」
まず、「これまでの実務」って何だ?というところですが、これは平成26年度税制改正時の取扱いを意味していると考えられます。東京都の場合、平成26年度税制改正の地方税法の改正に伴い、平成26年10月1日以降開始する事業年度から適用される税率が公布されたのは平成26年7月2日でした。
そのような状況を受け、平成26年度税制改正時も、第284回企業会計基準委員会議事において法定実効税率の考え方が示されました。
すなわち「連結納税制度を適用していない企業においては、下記のいずれかの法定実効税率を適用する。」という見解が示されていました。
(b)地方法人税法の税率及び地方税法等改正法による標準税率の増減を織り込んだ住民税率及び事業税率を用いて算出した法定実効税率(*1)
*1 超過課税により標準税率を超える税率は変更されないと仮定して,標準税率の増減のみを反映することとした。
第 307 回 企業会計基準委員会議事での考え方は、上記(b)*1の考え方を踏襲していると考えられます。
さて、平成26年度税制改正時とは異なり、東京都では4月1日に改正条例が公布され、超過税率が明らかとなっているにもかかわらず「標準税率を超える税率は変更されないと仮定して」法定実効税率を計算すべきなのかが問題となります。
「②のケースにおいて、地方税法等改正後の標準税率に基づく超過税率に関する地方団体の改正条例が公布されていないことにより、超過税率が標準税率を超える差分が決定されていない場合」をどう読むのかが微妙ですが、②のケースは「平成 27 年度税制改正に係る地方税法等改正法が平成 27 年 3 月 31 日までに公布されたが、各地方団体の改正条例が平成 27 年 3 月 31 日までに公布されない場合」のことですので、当然決算日時点においては「地方団体の改正条例が公布されていない」ことになります。
にもかかわらず敢えて、「地方税法等改正後の標準税率に基づく超過税率に関する地方団体の改正条例が公布されていないことにより、超過税率が標準税率を超える差分が決定されていない場合」と記載されているのは、決算作業中に超過税率が判明しない場合の取扱いを述べていると考えられるのでは無いかと思います。
また、仮に改正前の超過税率を用いて法定実効税率を計算するとすると、4月1日に公布された改正条例による税率変更の影響額を注記することも検討しなければならないということになってしまうのではないかと考えられます。
神奈川県や宮城県などは超過税率が3月31日に公布されており、当然改正後の超過税率で法定実効税率が計算されることとなりますし、「超過課税により標準税率を超える税率は変更されないと仮定」しているわけですが、「仮定」が誤っていることが明らかであれば修正する必要があると考えられます。
というわけで私見としては、改正後の超過税率を使用して法定実効税率を計算すべきなのではないかと考えますが、大原則の考え方は「公布日」がいつかですので、標準税率は交付済みなので改正後、超過税率は4月1日公布なので改正前を前提とするという整理も整理の仕方としてはすっきります。
この点については、経営財務等で取り上げられると思いますので、取扱が明らかになったら再度取り上げたいと思います。
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