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社外取締役を置くことが相当でない理由-3月決算事例

T&A master No.598の巻頭特集で「社外取締役選任、相当でない理由」として、平成27年3月決算会社の事業報告に記載されている事例が掲載されていました。

コーポレートがバンスコードの施行と会社法の改正によって、従来社外取締役を選任していない会社の多くが、今回の総会で社外取締役を選任しているようですが、社外取締役を選任しない会社がどのような理由を記載するのかが気になっていたので参考になります。

今回の総会でも社外取締役を選任しない会社の記載例として取り上げられていたのは以下の三社です。

  1. ユニマットそよ風
  2. 中越パルプ工業
  3. エンチョー

1.ユニマットそよ風

同社の株主総会は平成27年6月23日に予定されていますが、同社のホームページに第40回定時株主総会の招集通知が掲載されていますので、事業報告の記載内容を確認できます。

少し長くなりますが、同社の事業報告から該当部分を抜粋すると以下のように記載されています。

⑤ 社外取締役を置くことが相当でない理由
 当社は、社外取締役を置いておりません。当社は従来、当社事業の現場に精通した社内出身者である取締役を中心に、迅速かつ当社事業の特性をふまえた意思決定を取締役会でおこなうことを重視していたため、社外取締役の選任はおこなっておりませんでした。もっとも、当社といたしましても、経営への監督を強化するための社外取締役選任の有効性に関する近時の議論をふまえ、現在、社外取締役候補者の選定をおこなっております。選定にあたっては、企業経営への理解に加えて、当社が属する介護業界に関する知見を有すること並びに経営への客観的な意見を頂くため、当社経営者からの独立性を有することを要件としております。しかしながら、現時点でこれらの要件を満たす適任者の選定に至っておりません。今後とも当社に最適なコーポレート・ガバナンスを目指しつつ、引き続き、当社の社外取締役として適切な人材の確保に向けて、検討をおこなってまいります。

一言でまとめると、介護業界に精通した社外取締役としての適任者がいないということいえそうです。確かに、今回の改正に伴い、社外取締役の数が足りないのではないかという話はよく聞きますので、探してみたけれども適任者が見つからなかったというのは理由としてはありだと考えられます(いつまでも、その理由を続けるのは苦しいですが・・・)。

2.中越パルプ工業

中越パルプ工業の株主総会は平成27年6月25日に予定されていますが、招集通知は同社のホームページに掲載されています。同社の事業報告書から関連部分を抜粋すると以下のようになっています。

③ 社外取締役を置くことが相当でない理由
当社は、取締役会のほか審議機関として、取締役(兼執行役員)と執行役員で構成する常務会を設置しております。
常務会は、取締役会からの権限委譲のもと、経営の諸課題に対し活発な意見交換と議論を行い、取締役会での迅速かつ効率的な意思決定に資する会議体として機能し、取締役会は、各取締役がその専門的知見と、監督者としての立場で、重要性、合理性、適法性など様々な観点から議論を重ね、経営の意思決定を行っております。
また、独立社外役員を含む監査役会メンバーは、独立かつ客観的な見地から、取締役会の意思決定の妥当性、適正性を確保するための適宜適切な指摘、助言を行うことはもちろんのこと、経営の健全性の確保に努めております。
そのほか、専門スタッフによる内部監査体制や、社内外の内部通報体制を整備、運用し、潜在リスクや不正行為等の是正に努めるなど、法令遵守はもとより、品質、安全、環境、人権、倫理といった様々な観点から、透明かつ公正なガバナンスを目指す体制を整えております。
当社は、社外取締役の重要性については認識しておりますが、当社の経営規模・体制を総合的に勘案すると、ガバナンスは適正に構築、運用されていることを踏まえ、社外取締役を設置しておりません。
 今後、社外取締役の役割につきましては、より一層検証が進むものと推察いたしております。 当社といたしましては、今後、経営における社外取締役の役割について、十分な議論と検証を重ね、設置の必要性があると判断する場合には、具体的な検討を行ってまいりたいと存じます。

「経営規模・体制を総合的に勘案すると、ガバナンスは適正に構築、運用されている」ので社外取締役は不要ということのようです。多くの会社に当てはまりそうな理由ではありますが、同社の株主総会は上記の通り6月25日に開催が予定されているところ、総会の3週間以上前の招集通知は6月1日付で同社のホームページに掲載されていることから、コーポレートガバナンスに対する意識が低いわけではなく、むしろ高いのではないかと感じます。
 そういった会社が「今後、社外取締役の役割につきましては、より一層検証が進むものと推察いたしております。」という一文をどのような思いで記載したのかが個人的には興味があります。社外取締役を置いても意味ないよという声が聞こえるのは私だけでしょうか。

3.エンチョー

同社の招集通知もホームペー上に掲載されています。株主総会は6月23日開催予定です。同社の事業報告書から関連部分を抜粋すると以下のようになっています。

4.当社は社外取締役を選任していませんが、社外取締役を置くことが相当でないと判断した理由は以下のとおりであります。
当社では、社外監査役2名による監査が実施されている現状の体制において、経営監視機能は有効に機能していると考えております。具体的には、社外監査役2名のうち1名は、長年にわたる金融業務の経験から、財務および会計に関する相当程度の知見を有し、他の1名は長年総務部門の実務を担当し、また、複数の企業で監査役として関わった豊富な経験を有しており、それぞれ専門的な見地から業務執行の適法性を監査しております。また、各社外監査役は、取締役会において重要な意思決定の過程および業務の遂行状況を監査
するとともに、取締役および従業員と適宜意見交換を行うことにより経営監視の強化を図っております。
上記のとおり経営監視機能が十分に確保されている中で、社外監査役に加えて社外取締役を置くことは職務遂行上の重複感と費用の負担増を生じさせ企業価値を損なうおそれが懸念されることから、当社は社外取締役を置くことは相当でないと考えております。
なお、当社は改正会社法や取引所規則の精神に則り、今後もガバナンスの向上に努めてまいる所存であります。

ポイントは、社外監査役に加えて社外取締役を置くことは職務遂行上の重複感と費用の負担増を生じさせ企業価値を損なうおそれが懸念されるという部分でしょう。

これは普通なかなか書けない記載ではないでしょうか。そもそも、社外監査役と社外取締役に「職務遂行上の重複感」があるとするのは、取締役も監査役もやることは同じようなものということになってしまうように感じます。さらに、「費用の負担増」は理解できますが、それを踏まえて改正会社法は監査等委員会設置会社という新たな選択肢を設け、実際数多くの会社が監査等委員会設置会社への移行を表明していることからすると、やはり理由としては苦しいと感じます。

このような記載は株価に影響するのだろうかと気になったのでヤフーファイナンスで調べてみると、1単元1000株で、1日あたりの取引が1000株という日も多く、直近1カ月くらいは平均すると1日5単元程度の取引しか行われていないようです。

上記のような記載がなされるのも変に納得できてしまいました。

社外取締役を選任しないのは同じでも、読み手としての感じ方は全く異なるというよい3事例だったと思います。

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