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未作成だと会社法による計算書類等の謄本請求も効果なし?

会社法442条1項では、株式会社は計算書類および事業報告ならびに附属明細書を5年間、その本店に備え置かなければならない旨が定められています。

そして、同条3項では株主及び債権者に対して以下のような計算書類等の謄本請求権が認められています。

3 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第2号又は第4号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。

一 計算書類等が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧の請求

二 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求

三 計算書類等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求

四 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって株式会社の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求

この謄本請求権に関連してT&A master No615に面白い記事が掲載されていました。この記事で紹介されていた裁決事案では、株主が会社法442条3項の規定に基づき貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、事業報告および附属明細書の謄本交付を請求したところ、会社は請求された計算書類等のうち、事業報告および附属明細書のうち固定資産の明細、引当金の明細などについては作成していないことを理由に株主に交付をしなかったとのことです。

株主は、本件訴訟のなかで、仮に存在しないとしても被告会社には事業報告などを作成したうえで株主に謄本を交付すべき義務があると主張しました。これに対して裁判所は、会社法442条3項1号が上記の通り「計算書類等が書面をもって作成されているとき」などと規定されていることを踏まえると、同条は会社で計算書類等が作成されていることを前提として、その謄本交付の請求を認めているものと解されるため、会社が計算書類を作成していない場合には同項に基づいて計算書類等を作成することまでは請求することができないと判断したとのことです(東京地方裁判所平成27年7月13日判決)。

確かに会社法442条3項1号では「計算書類等が書面をもって作成されているとき」とされているものの、そもそも会社法435条2項では「株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。」と計算書類、事業報告および附属明細書は作成しなければならないものとされていることからすれば、作成していなければ謄本を交付する必要はないと言われても株主としては納得できないのではないかと思います。

とはいえ、今回のケースでは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表、附属明細書のうち販管費明細は交付されており、上場会社や大会社でなければ、税務申告目的でこれらの書類のみ作成しているというケースも多いので、会社法の規定はともかくとして現実的な判断といえそうです。

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