オーナー系上場会社の相続税対策
2ヶ月程度前のリリースですが、タマホーム(株)の適時開示情報に興味深いものがありました。
2015年11月10日に「株式会社TAMAXによるタマホーム株式会社(証券コード 1419)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」というものがあったので、TOBされて上場廃止になるのかと思いきや、中身を確認してみると、どうやら相続対策のために実施されたTOBのようでした。
いわれてみれば買付者の名称が「株式会社TAMAX」ですから、会社関係者であるのも納得です。
このTOBの概要は以下のとおりです。
買付者の「株式会社TAMAX」は現代表取締役社長の長男が保有する資産管理会社が60%、次男が保有する資産管理会社が40%を所有する資本金100万円の会社です。
この「株式会社TAMAX」が現代表取締役社長の保有する株式を取得することを目的としてTOBを実施しています。プレスリリースでは「公開買付者は、創業者一族が保有する対象者株式 14,878,000 株(所有割合:49.50%)の一部(9,506,700株、所有割合:31.63%)を取得すること(以下「本取引」といいます。)を目的として」と記載されていますが、「株式会社TAMAX」の所有者が創業者一族ですから、実質的には社長の保有する株式を取得することが目的であるのは明らかです。
なお、同プレスリリースの中で「公開買付者は、本公開買付けにおいて、創業者一族の所有割合を引き上げること、すなわち創業者一族以外の第三者から対象者株式を取得することは目的としておらず」と明確に記載されています。
興味深いのは、この公開買付における価格です。1株430円が用いられていますが、この金額は「平成27年11月9日の東京証券取引所市場第一部における対象者株式の普通取引終値460円に対して6.52%(小数点以下第三位を四捨五入、以下同じとします。)のディスカウントをした金額」となっている点です。
一般的に公開買付けで買付価格を時価よりもディスカウントすれば応募する株主がいないため公開買付けは失敗することになると考えられますので特にどうということはありませんが、上記のスキームではもともと株式を移管することが目的ですから、当然のことながら社長が公開買付けに応募し、保有していた35.57%の株式のうち26.4%を売却しています。
時価よりも低い価格での公開買付けに他に応じる株主がいるのかと思いましたが、現社長は保有株式35.57%(約1069万株)すべてを公開買付けに応募しましたが、約950万株の買付条件に対して約1280万株の応募があったため結果的に社長からの買付分は26.4%(約793万株)となっています。次世代の経営者への市場からの評価なのかもしれません。
ここで気になるのは税務上の取扱いです。一般株主が時価よりも低い価格で公開買付けに応じるのは自由ですが、上記のスキームは相続対策でもあるのは明らかですので、このようなケースで税務上どのような取扱いになっているのかは気になるところです。
いずれにしてもこのような手法もあるというのは知っておいて損はなさそうです。
日々成長